JTMI 税理士法人 日本税務総研

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  • 共同相続

    共同相続

    共同相続とは

    共同相続とは相続人が二人以上いる状態で被相続人の遺産が各相続人に遺産分割されていない状態のことを指します。相続というのは、人が死亡した瞬間に発生するとされています。

    人が死亡した瞬間に、法定相続人が複数名いる場合は、共同相続となります。

    共同相続のあと、誰がどの相続財産を受け取るかを遺産分割協議という話し合いで決めると、それぞれの相続財産の所有者が決まります。

    相続登記

    共同相続のまま登記するというのは、問題が生じやすい素地を持ち合わせています。

    被相続人の不動産の名義書き換えは、遺産分割協議をせずに共同相続のまま登記することができます。この場合の不動産の持ち分割合は、法定相続の割合と同じになります。法定相続割合に基づく相続登記は、相続人全員の了解がなく相続人の一人からだけでも登記できてしまいます。

    共同相続の状態で登記をしてしまうと、固定資産税の支払い義務も法定相続割合に応じて発生します。

    このとき相続人の一人が家と土地のすべてを使用しているのに固定資産税を滞納してしまうと、 登記されたほかの相続人のところにも固定資産税の請求がされてしいます。
    家や土地を売却するときに、相続人全員の了解が必要にもなります。
    不動産の売却において、相続人全員が売却額に納得し、すみやかに売却できるというのは、めったにありません

    遺産分割協議

    共同相続の状態を解消するためには、遺産分割協議をしなければなりません。

    遺産分割協議というのはいつまでにやらなければならないという、法律の決まりはありません。

    遺産相続というのは時間がたてば相続財産の把握もやりにくくなり、時間がたってしまうと他の相続人に対して遺産分割協議の話をもちかけたり、 ハンコを押してくださいというようなことがとても言いづらくなるものです。共同相続の状態というのは、なるべくすみやかに解消したほうがよいでしょう。


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    • 転換後契約の相続税評価

      転換後契約の相続税評価

      生命保険などの転換後契約(契約を切り替えて違う保険にしたもの)の相続税評価については、相続税法第3条第1項第1号、第3号及び第5号に被相続人が負担した保険料という記述があり、以下の通り規定されています。

      (1)保険料の一部につき払い込みの免除があった場合
      当該免除に係る部分の保険料は保険契約に基づき払い込まれた保険料には含まれない。

      (2)振替貸付けによる保険料の払込みがあった場合(当該振替貸付けに係る貸付金の金銭による返済がされたときを除く。)又は未払込保険料があった場合
      当該振替貸付けに係る部分の保険料又は控除された未払込保険料に係る部分の保険料は保険契約者が払い込んだものとする。

      (注)法第3条第1項第1号に規定する生命保険契約(以下「生命保険契約」という。)が、いわゆる契約転換制度により、既存の生命保険契約(以下3−13及び5−7において「転換前契約」という。)を新たな生命保険契約(以下5−7において「転換後契約」という。)に転換したものである場合における法第3条第1項第1号、第3号及び第5号に規定する「被相続人が負担した保険料」には、転換前契約に基づいて被相続人が負担した保険料(5−7の適用がある場合の当該保険料の額については、転換前契約に基づき払い込まれた保険料の額の合計額に、当該転換前契約に係る保険金額のうちに当該転換前契約に係る保険金額から責任準備金(共済掛金積立金、剰余金、割戻金及び前納保険料を含む。)をもって精算された契約者貸付金等の金額を控除した金額の占める割合を乗じて得た金額)も含むのであるから留意する。

      出典:相続税法基本通達

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      • 死因贈与と相続税

        死因贈与と相続税

        人が死亡した場合、通常は法定相続人のみが被相続人の財産を相続し、それ以外の第三者が取得することはできません。

        第三者に財産を残したい場合、遺言、死因贈与という法律上の手段があります。

        遺言は被相続人だけの意思で行うことができ、第三者は被相続人の死後それを放棄することが出来ます。
        死因贈与は被相続人と財産を取得する第三者の間で生前その内容を確認し合って行う契約ですから、死後それを勝手に放棄できません。

        個人が死因贈与により財産を取得したときは、相続税の課税対象となります。

        法人が死因贈与により財産を取得したときは、相続税の課税対象にはならず、受贈益に対し法人税が課税されます。
        また、被相続人が法人に時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税されますので、被相続人の所得税を準確定申告する必要があります。


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        • 船籍のない船舶の相続税評価

          船籍のない船舶の相続税評価

          相続税又は贈与税の納税義務者が制限納税義務者である場合には、課税財産は日本国内にある財産に限られています。では、納税義務者が制限納税義務者である場合、船籍のない船舶は相続税の課税財産とならないのでしょうか。

          船舶とは

          日本の船舶法では、「船舶とは、浮揚性を有し、自力航行能力の有するものである。沈没船・座礁船も船舶である。建造中の船舶については、進水式を限度に船舶として取り扱うものと解されている。なお推進器を有しない浚渫船は、船舶法施行細則2条により船舶とはならない。台船、作業船なども自力航行の力がなく我が国では船舶として取り扱わない。」とされている。

          船籍のない船舶

          国際法上、船舶は国籍(船籍)をもたなければならなず、国籍付与の要件、基準については、各国の国内法に委ねられており、日本においては、船舶所有権の全部を必要とする所有者主義をとっています。

          防衛大学校を含む海上自衛隊の船舶、総トン数20トン未満の船舶、端舟、ろかい舟は、日本船舶あっても、船舶登記、船舶登録、船籍港、総トン数の測度申請、船舶国籍証書などの適用はなく、船籍もありません。

          船籍のない船舶の相続税評価

          相続の際には船舶も相続税評価がされるものとして相続税法で定められており、評価は船籍のある場所を元になされることになっています。

          「船籍のない船舶」については、相続税における基本通達の中に記述があり、「その船舶がその時点でどこに置かれているか」でその所在を判断します。


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          • 共有名義の土地の相続について

            共有名義の土地の相続について

            遺産分割において不動産の共有は避けた方がいいと言われています。
            共有名義の土地の相続について知っておきたい問題点と、共有に適してるケースについて解説します。

            共有名義の土地の基礎知識

            共有とはひとつの物を複数人が共同で所有している状態をいいます。

            共有の場合、各共有者は持分の割合に応じて共有物の全体を使用することができます。
            極端な例ですが、土地について各自の持分が100分の1と100分の99だとしても、それぞれの共有持分は土地全体に及ぶので利用方法に違いはありません。持分が100分の1だから共有土地の100分の1の部分だけしか使えない、などということにはなりません。

            共有土地を賃貸して賃料収入があるような場合には、各共有者が共有持分割合相当の賃料を得る権利があります。税務上の所得税の確定申告でも共有割合(持ち分割合)に応じて不動産(賃料)収入の申告を行います。
            共有物の管理は持分の価格に従いその過半数で決めるものとされていますので、共有持分に応じて発言権が異なることとなります。
            共有物の状態を変更したり、処分するなどの際には、共有者全員の同意が必要です。

            動産でも共有状態が生じることはありえますが、実際に問題となるのは不動産の共有が圧倒的多数です。不動産の共有状態は相続によって発生するほか、例えば、土地を夫婦名義に変更するなどのケースが考えられます。

            不動産の所有状態は不動産登記において公示されています。(登記事項証証明書に記載される。)共有の登記がされていれば容易に判別することができます。相続などで登記が元のままになっていたりすると、登記簿を見ても現在の所有関係は分かりません。

            共有のもたらす問題点

            共有名義の土地は相続にあたって様々な問題が生じる可能性があります。

            共有持分のさらなる細分化

            土地を2分の1ずつ共有している共有者の一方がお亡くなりになって相続が開始した場合、共有持分が相続人の数だけ細分化することとなります。土地の共有者が増えるという事は利害関係人が増えるという事で、土地売却時や土地活用したいときに全員の意見がまとまらないという問題が度々発生します。

            遺産分割を行うことが困難になる

            共有関係を解消して単独所有とするためには、共有者全員で遺産分割協議(共有物分割協議)を行います。共有関係が複雑化した場合、共有者の中に協議に非協力的な持分権者が生じる可能性があります。特に、共同相続人の中に「故人の前配偶者の子」など、普段付き合いのない人が含まれているような場合、意思疎通が困難になります。

            共有関係を可能な限り早いうちに解消することや、遺言書により将来問題が生じないように対処をしておく事が重要です。

            平等に相続したいとの思いから、不動産も含めて全てを法定相続分割合で分割するケースがありますが、このような遺産分割は避けたほうがいいでしょう。
            相続時点で相続人間が円満であっても、その内の誰かが亡くなり、次に相続人となる人との間も上手くいくという保証はありません。遺産分割の時点から先の相続まで見据え、分割方法を考えることが大切です。

            共有状態の解消についての公的制度

            共有名義の土地を相続して相続人間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割に代わる処分を求めることが可能です。司法書士・弁護士などに相談することとなり、余計な手間や高額な報酬が生じるおそれがあります。

            共有状態は相続開始前に解消しておく方が望ましく、遺言で将来の共有状態解消を目指すことをお勧めします。

            共有による遺産分割が適してるケース

            田中さん一家は父が亡くなり、子供3名で遺産をどのように分割するかの話し合いをしていました。父の遺産は自宅(3,000万円相当)と僅かな預貯金のみです。三人の子供で遺産分割後に自宅を売却して金銭で分配することを話し合い、自宅を三人の共有(一時的に一人の名義にしても可能)にした後に売却して、各自が1,000万円ずつ受け取りました。

            遺産の大半が不動産で平等に遺産分割することが難しい場合、売却を前提とした遺産分割、換価分割をすることができます。すぐに売却することに共有者全員が同意しているため、共有のデメリットを受けることなくスムーズな遺産分割が可能となります。


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            • 相続発生後の手続き

              相続発生後の手続き

              相続が発生すると、死亡届の提出、故人の準確定申告書の提出、電気・ガス・水道等公共サービスの名義変更、勤務先への書類提出、年金・一時金等の請求など、様々な届出や面倒な手続きを行わなくてはなりません。

              手続を行わなければペナルティが生じるものや、申請をしなければもらえない給付金もあります。

              以下は一般に葬儀から申告までに提出することが多い届出の一部です。

              死亡に伴う基本的な届出書類

              • 死亡届
              • 死亡診断書
              • 世帯主変更届(住民異動届)
              • 児童扶養手当裁定請求書
              • 準確定申告
              • 高額医療費支給申請書
              • 公共料金等名義変更
              • 勤務先への各種届出
              • 運転免許証の返却
              • クレジットカードの解約等

              年金保険の請求手続き

              • 国民健康保険葬祭費支給申請書
              • 健康保険被保険者家族埋葬料請求書
              • 国民年金遺族基礎年金給付裁定請求書
              • 国民年金寡婦年金裁定請求書
              • 死亡一時金裁定請求書
              • 国民年金・厚生年金保険給付裁定請求書
              • 年金受給選択申立書
              • 年金受給権者死亡届
              • 死亡保険金支払請求書

              相続税に関する届出等

              • 相続放棄申述書
              • 遺産分割協議書
              • 申告書
              • 遺留分減殺請求
              • 延納申請書
              • 物納申請書
              • 相続財産の各種名義変更

              届出や手続きで提出が必要な書類は各人によって異なります。
              自分にはどの書類が必要か、漏れなく正確に把握することが大切です。

            • 死亡後に行う高額療養費の申請手続き

              死亡後に行う高額療養費の申請手続き

              高額療養費とは、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に払い戻される支給金のことで、これは同一世帯の一か月に実際にかかった医療費をもとに計算されます。

              相続時における高額療養費について、相続人が受け取った場合でも、被相続人が受給すべきものとなりますので、被相続人の相続財産となります。

              高額療養費の請求手続き

              高額療養費に該当される世帯には、医療費を支払った2〜3か月後に「高額療養費の払戻しのお知らせ」(高額療養費支給申請書)というはがきが送付されますので、それに従って手続きを行います。

              「高額療養費支給申請書」に氏名・住所・生年月日など必要事項を記入し、該当している月の病院等の領収書のコピーを添付して提出します。
              申請者の本人確認書類、印鑑、振込口座の確認が出来るもの(通帳など)、相続人全員が確認できる戸籍謄本、委任状が必要です。

              提出先は、国民保険なら住所地の市町村役場の健康保険課、健康保険なら健康保険組合または社会保険事務所です。

              申請書が届いてから2年を過ぎても手続きを行わないと支給請求をする権利がなくなります。


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              • 世帯主変更届

                世帯主変更届

                死亡などの理由により世帯主に変更があった場合、その事実を市町村役場に知らせる世帯変更届を提出します。
                世帯主の死亡等により世帯に属する者が1人になる場合には、届出の必要はありません。

                死亡による世帯主の変更は、世帯主の死亡後14日以内に、新しく世帯主となる者か代理人が行います。
                代理人による場合は、委任状が必要となります。親族の場合でも別世帯の場合は委任状が必要です。
                本人確認書類と認印を用意して手続きをします。

                世帯とは、居住及び生計を共にする集まり、または、単独で居住し生計を維持する者をさします。世帯を構成する者のうちで、主に生計を維持する者で、世帯を代表する者として社会通念上妥当と認められる者のことを世帯主と言います。

                世帯主が決まっていることで、役所の手続きや役所からの事務連絡をスムーズに行うことができます。
                世帯主は必ずしも筆頭者ではありません。筆頭者とは戸籍の冒頭に搭載される者のことです。


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                • 亡くなった場合の介護保険料額について

                  亡くなった場合の介護保険料額について

                  65歳以上の第1号被保険者がお亡くなりになった場合、介護保険の被保険者資格の喪失日はお亡くなりになられた日の翌日となります。

                  介護保険料は被保険者資格喪失日の前月までを月割りで算定し、介護保険額が変更となった場合は、後日、役所より『介護保険料変更決定通知書』が送付されてきます。

                  死亡による介護保険料額の変更にともない、介護保険料が納めすぎとなった場合は相続人に還付(返金)し、不足する場合は相続人に不足分を納付していただくことになります。

                  なお、還付される介護保険料は被相続人の相続財産となり、不足する介護保険料は被相続人の債務となります。


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                  • 老人ホーム入居に係る贈与税及び相続税

                    老人ホーム入居に係る贈与税及び相続税

                    入居一時金にかかる贈与税

                    老人ホームへの入居時に、夫が妻の、妻が夫の入居一時金を負担した場合、贈与税の課税対象となる場合がある。

                    入居一時金の支払い債務を負うのは原則として法人ホームの役務提供を受ける入居者である。

                    妻が入居し夫が一時金を支払った場合、入居契約上入居者が債務者となるなら、夫から妻へ当該一時金に相当する金銭の贈与(相続税法9条に規定する経済的利益の贈与)があったことになる。
                    この場合、当該贈与財産が「扶養義務者相互間において生活費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」に該当するかが問題となる。

                    判決例には、非課税財産と認定したものと、否定したものがある。いずれも、入居後数ヶ月以内に一時金負担者の相続が開始し、相続税の申告が行われた事例である。

                    • 認定したもの:H22.11.19裁決事例集No.81、一時金945万円
                    • 否定したもの:H23.6.10裁決事例集No.83、一時金13,370万円

                    判決事例は、入居の目的(要介護状態となっているか否か)、入居一時金の金額(数百万円なのか、数千万円なのか)、施設の設備状況(質素か豪華か)等を総合的に勘案して「生活費に充てるために行った贈与財産のうち通常必要と認められるもの」に該当するかを判断している。
                    なお、通常必要とされる生活費に該当するのは「必要な都度、必要な額を負担した場合である」とするのが、従来からの国税庁の解釈である。月々の生活費や入居費、入居一時金の償却費など、入居者が受ける生活利益に対する費用負担は、扶養義務相互間における生活費に充てるため通常必要と認められる非課税財産に該当するであろう。

                    入居時点で贈与と認定されないようにするには、老人ホームとの入居契約において、入居一時金の支払義務者を資金提供する配偶者にすることが重要である。前払いの性格を有する一時金は、未償却部分が解約により返還されるので、返還金請求権を資金提供者が有している契約形態ならば当該部分に関する贈与の問題は生じないと解するからである。
                    老人ホームの都合で資力のない入居者が契約当事者とならなければならない場合には、資金負担者と入居者の連帯債務として一時金を納付することとし、連帯債務者である資金負担者と入居者の間で、入居者の内部負担割合をゼロとする契約を締結しておけば、月々の償却費以外には、贈与の問題は生じないと解する。

                    入居一時金にかかる相続税

                    老人ホームの入居者が死亡した場合、入居契約が自動解除されたり、相続人により解約された入居一時金の一部が返還されたりすることがある。一時金の返還請求権は金銭に見積もることができる経済的価値のある権利であるから、返還請求権が被相続人に帰属していれば本来の相続財産に該当する。

                    夫婦2名で入居し、入居金の負担者である夫に相続が開始した場合、契約の一部解除による一時金の返還請求権は相続財産となる。
                    妻が入居している部分の一時金を夫が負担しているが、入居契約上未償却部分の返還請求権が妻にあるという契約ならば、未償却部分は相続財産とはならない。この場合、入居一時金の支払い時点で当該金額相当の贈与が行われたと認定される可能性が高く、当該支払が扶養義務の履行であるならば贈与税の非課税財産となるが、そうでなければ、贈与税の除斥期間の問題となる。一時金の負担時点に非課税財産になるか否かの基準は、平成22年11月19日の裁決の認定基準である「入居金に相当する金額が介護を必要とする配偶者の生活費に充てるために通常必要と認められるか」が参考となる。

                    問題の構造

                    1. 月額100万円の豪華な賃貸マンションに居住している妻に対し、家賃相当額の贈与が行われたとして贈与税が課税されることはない。賃借人である夫が負担した保証金は相続財産となる。
                    2. これに対し、健康に問題がない状態で老人ホームに入居すると入居一時金の贈与の問題が生じるのはなぜか。
                    3. 実務的には、入居一時金の負担者が夫であれば、契約者が妻であっても、返還される未償却部分の一時金は相続財産となると取り扱うことができれば、相続税の課税漏れは生じない。
                    4. ところが、契約者が妻であり、資金負担者が夫であるならば、入居時点で贈与が行われたと解さざるを得ず、相続税の調査において、当該負担金が贈与税の非課税財産になるかが争われるのである。