JTMI 税理士法人 日本税務総研

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  • 私道の評価

    私道の評価

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    私道がなければ市場価値のない無道路地となるのだから、私道の評価は高いのでは?

    無道路地にこれから敷設される私道と、宅地に既に敷設されている私道との関係は、嫁入り前の娘と妻の関係にどこか似ています。私道は後者のような立場です。

    私道もがけ地と同じように、接面する宅地と一体となってその効用を発揮しています。

    しかし、対象評価宅地の評価は道路に面した土地と同じ路線価を基に計算していますので、私道が宅地の市場価値に貢献した部分は対象土地の評価額に反映されていることになります。したがって、宅地の一部として評価しますが、同時に特定の通行人にも通路として利用されることから、私道部分の評価額は宅地の評価額の30%で評価します。袋地の評価では通路部分は他の通行人の利用に供されることはありませんので、私道評価して控除しないことを合わせて理解する必要があります。

    なお、私道であっても不特定多数の者の通交の用に供されているときは、評価する必要はありません。

    また、税務署で私道に特定路線価を設定してもらって評価する方法もあります。

    正面路線価を基に評価する計算例は次のとおりです。

    【図36】

    正面路線価を基に評価する計算例
    正面路線価を基に評価する計算例

    正面路線価に対応する奥行距離による奥行価格補正後の金額

    想定整形地の価額

    150,000円(正面路線価)×1.0(奥行距離16mに対応する奥行価格補正率)×256㎡(abcdで囲まれた土地の地積)=38,400,000円

    150,000円(正面路線価)×0.97(奥行距離8mに対応する奥行価格補正率)×96㎡(aefgで囲まれた土地の地積)=13,968,000円

    38,400,000円-13,968,000円=24,432,000円

    24,432,000円÷160㎡(256㎡-96㎡)=152,700円

    私道(持分6分の1)の価額

    152,700円×64㎡×1/6×0.3=488,640円

  • 奥行長大地と不整形地

    奥行長大地と不整形地

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    奥行長大補正率と不整形地補正率は同時に適用できる?

    奥行長大地と不整形地とは間口距離とのバランスの違いによる区別と考えられ、重複適用はできません。

    奥行長大地と不整形地とは、間口距離とのバランスが悪いという点では同じです。

    従って、奥行長大補正率と不整形地補正率は、重複して適用することはできません。

    不整形地の評価計算では、

    • 不整形地補正率表の補正率×間口狭小補正率
    • 奥行長大補正率×間口狭小補正率

    のうちいずれか低い率を不整形地補正率とし、その限度を0.6としていることに注意が必要です。

    ところで、港は海に面し、海は世界に通じています。良港に恵まれた町が交易で栄えるように、土地は道路に接面することでその地域に通じ、様々な地域の恩恵を受け、その価値を形成します。それと同じように道路との接面状況すなわち間口距離は、土地価格を決定する上で重要な要因です。その間口の重要性を有効に生かせるのは、間口距離とのバランスのとれた土地の形状です。

    【図26】

    奥行長大地と不整形地
    奥行長大地と不整形地

    【図26】は間口距離が同じ二つの土地ですが、間口とのバランスがとれていない点が共通しています。一つは奥行が長大な土地で、もう一つは不整形な土地です。奥行長大補正率と不整形地補正率は重複して適用することができないのは、この二つの補正率が兄弟のような関係にあることを表しています。

  • 正面路線価の判定

    正面路線価の判定

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    地区区分の判定を正面路線価ですると間違い?

    その土地の地区区分は、奥行価格補正後の路線価が最も高い路線で判定します。

    評価対象の土地の市場価格は、【表1】のどこに位置するかにより不動産市場での価格形成過程が異なります。つまり、個別性のある市場が形成されています。

    【表1】路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

    路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方
    路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

    例えば、市場ごとに、目安となる最適な宅地規模が違いますし、またシュエ規制を重視するか費用性を重視するか等、市場参加者の価値判断も異なります。したがって、地区区分の判定は、初めの重要なステップになるというわけです。

    土地を評価する場合、その土地の市場価格が形成される上で最も影響力のある用途の判断において、評価対象地に接する一番高い路線価がつけられている路線が属する地区区分で判断するというのは正確ではありません。その土地がどのような用途に供されることを前提として価格が形成されるかという観点から見ると、その土地の市場価格に最も影響力を持っている路線(正面路線価)はどの路線価かということが重要なのです。一般的には接面道路との距離が離れれば離れるほど影響力は減少します。そこで、土地全体に及ぼす影響力は、奥行価格補正後の価格を基に判定することになります。

    整形地の場合の正面路線価の判定

    【図7】

    整形地の場合の正面路線価の判定
    整形地の場合の正面路線価の判定

    一見すると、路線価の高い普通商業・併用住宅地区になると考えがちですが、奥行価格補正を行うと、次のようになります。

    200,000円(路線価)×0.92(奥行距離5mに対応する奥行価格補正率)=184,000円

    185,000円(路線価)×1.0(奥行距離10mに対応する奥行価格補正率)=185,000円

    184,000円<185,000円

    となり、この土地は普通商業・併用住宅地区よりも、普通住宅地区内にある土地として価格が形成される傾向が強いため、地区区分は普通住宅地区となり、画地調整率はこの地区のものを使用することになります。

  • 評価上の土地の地積

    評価上の土地の地積

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    土地の評価にあたり、その面積をどこまで正確に測らないとだめ?

    実測面積が原則ですから、過去に測量していないかを調べ、測量の実績があればその数値を用いることができます。

    評価上の土地の地積

    相続税の土地評価額がその市場価値を反映して決定されている以上、評価上の地積は、原則として実測面積ということになります。

    しかし、土地売買取引でも、土地面積が実測面積とほぼ同じと考えられる場合には、実測する手間暇をかけず公簿取引とし、実測する必要がある場合には実測取引とするように、相続税の場合も、土地の地積の実測を必ず、要求しているわけではありません。ただし、過去に実測をしていて実際の面積を知っていた、あるいは知ることができたのに、または見ただけでも公簿面積より広いと明らかであるにもかかわらず、公簿面積で申告している、となると話はややこしくなりますので、次のような点にも注意をし、メジャー等で現地の地積を測っておく等、税務署の先回りをしておく必要があります。

    1. 現地を確認したときに、測量作業に必要な基準点に金属釘(鋲)が打たれていないか、比較的新しい境界標が設置されていないか等に注意し、そのような痕跡があって過去に実測をしていることが予測される場合には、測量図等の保存がないか確認する必要があります。
    2. 土地の面積が大きい場合、売却等の理由で分筆登記することがあります。分筆する土地の面積は実測に基づいて登記されますので、もともと公簿面積より実測面積が広い土地を分筆していくと、最後に残った土地の公簿地積は実測面積とは大違い、ということになります。このため、○○番1という枝番がついている土地を評価する場合は、注意を要します。
    3. 過去に建物を建築しているときには、簡易測量をしていることがありますので、建築関係書類の保存を確認する必要があります。
    4. 隣地との境界確定や地積更正している場合には、法務局等で実際の地積が分かる場合があります。
  • 権利関係が複合した不動産の利用単位

    権利関係が複合した不動産の利用単位

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    利用単位の判定が分かれる場合に、参考となる考え方はある?

    評価の単位を判定するには、不動産市場で一つの取引単位となるかどうかを考えて、利用単位や不動産構成の最適組合せ等を総合的に判断して評価単位を決定します。

    不動産がどのように利用され、どのように構成(組合せ)されて、さらにそれについての不動産市場がどのような評価を受け市場価格が形成されるかを考えると、権利関係が複合した不動産の場合などの利用単位についてヒントが得られます。

    ゴルフ練習場を経営するため住宅地域にある宅地を賃貸借した敷地にゴルフ練習施設と事務所がある場合

    ゴルフ練習場敷地の評価上、事務所敷地の賃借権を借地権として控除すべきか否か、判断に迷うところです。この場合、事務所に借地権がついている、あるいはゴルフ練習場全部に借地権があるとして、貸地評価すれば相続税が安くなるので、そのような考えに傾きがちです。しかし、ゴルフ練習場の事業経営としてゴルフ練習場の施設等(構築物)と借地権との組合せが経済合理性にかなっているかという点、及び不動産市場をも考慮すると、賃貸契約で借地権が設置されているとみることは、慎重に判断しなければいけないというヒントを得られます。つまり、住宅地域で借地権を設定し、しかも建物を所有する目的も見当たらないようなケースでは、むしろ施設の利用を目的としていますので、全体を貸し付けられている雑種地として評価するのが合理的ということになります。

    ゴルフ練習場

    比較的交通の便が良い地域に自動車学校用地を賃貸借している場合

    自動車運転教習コースの構築物の他、建物が敷地の一角に建っています。この敷地を評価する場合、借地権を控除すべきか判断が難しいことがあります。交通法規等を学ぶための教室や学校事務室等は、自動車学校運営には不可欠です。また、建物は通常長期所有を想定し、安全にも配慮した堅固な建物とすることになります。つまり、建物自体の利用を目的とすることが必要であり、借地権が設定されているのではないかと考えるのが経済合理性から見て妥当であると考えられます。練習コースも同様に考えるかは、賃貸契約で区分しているか、賃貸料の計算方法等、賃貸契約の内容から借地権の範囲などをよく検討して評価しなければならないということになります。

    自動車学校

    賃貸住宅の敷地に隣接する貸家の賃借人専用駐車場

    駐車場は雑種地として評価するものと考えがちですが、この賃貸住宅と専用駐車場とは、一体となった賃貸不動産であり、不動産市場で一つの賃貸不動産として価格が形成されます。このような場合には、全体を貸家建付地として評価することになります。

    賃借人専用駐車場
  • 財産評価基本通達の構成

    財産評価基本通達の構成

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    財産評価基本通達は、どのように構成されている?

    土地の評価には欠かせない「財産評価基本通達」の概略を、整理して把握しておきましょう。

    財産評価基本通達の構成

    財産評価基本通達第2章において、土地及び土地のうえに存する権利(以下「土地等」といいます。)の評価に関する規定及び通達番号は、次のように整理されています。

    通則

    通達番号タイトル規定の内容
    7土地の評価上の区分「土地」の地目別の評価の基本通達
    7-2評価単位土地等の地目ごとの評価単位
    8地積地積の認識の仕方
    9土地の上に存する権利の評価上の区分「土地の上に存する権利」の種類ごとの評価の基本原則

    各論

    土地等の種類地目ごとの土地の分類及びそれぞれの評価方法個別の制限等がある土地等の評価方法地目ごとの土地の上に存する権利の評価方法準用規定
    宅地及び宅地の上に存する権利11~21-222~26-227~31
    農地及び農地の上に存する権利34~4040-3~41-242~43-4
    山林及び山林の上に存する権利45~4950~5253~55
    原野及び原野の上に存する権利57~58-358-5~59-260~60-4
    牧場及び牧場の上に存する権利61
    池沼及び池沼の上に存する権利62
    鉱泉地及び鉱泉地の上に存する権利69、7577、7978、80
    雑種地及び雑種地の上に存する権利8283~86-2、87-687~87-7

    個別の制限等がある土地等の評価方法

    22~22-3大規模工場用地関係
    23~23-2余剰容積率の移転関係
    24私道
    24-2~24-3土地区画整理事業中及び造成中の宅地関係
    24-5農業用施設用地
    24-6セットバックを必要とする宅地
    24-7都市計画道路予定地の区域内にある宅地
    24-8文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価
    25~25-3貸宅地関係
    個別(1)相当の地代を収受している貸宅地
    個別(2)一般定期借地権の目的となっている宅地
    26~26-2貸家建付地関係

    (1)昭和43年10月28日:直資3-22他

    (2)平成10年8月25日:課評2-8他

  • 土地等の相続税評価額の計算

    土地等の相続税評価額の計算

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    土地等の相続税評価額を大まかに計算する方法として、「路線価×地積=評価額」は大雑把すぎる?倍率方式は?

    路線価方式や宅地比準方式で評価する場合は、その土地に応じた評価手法を正しく適用できるかによって、評価額が大きく変わる場合があるので、素人判断は禁物です。その点、倍率方式は比較的簡単です。

    評価の方式には、土地等の評価額を路線価図の路線価を基に計算する「路線価方式」と、固定資産課税台帳の固定資産税評価額を基に計算する「倍率方式」があります。

    市街地的形態を形成する地域にある宅地については路線価方式により、その他の地域にある宅地については倍率方式により評価を行います。

    路線価方式

    「路線価方式」とは、評価対象地が接する路線(接面道路)の路線価に必要な画地調整率を乗じて計算した金額によって評価する方式です。

    路線価は、宅地の価額が概ね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに評価した1㎡当たりの価額(単位:千円)で、路線価図に表示されています。

    路線価方式
    路線価方式

    したがって、路線価に地積を掛けて評価した価額は画地調整率を考慮しないため、評価額としての最高限度額に近いものになりますが、その位置や形状等によって調整が行われることが通常です。

    【路線価方式による評価の手順】

    路線価方式による評価の手順
    路線価方式による評価の手順

    倍率方式

    「倍率方式」とは、固定資産税評価額に、地価事情の類似する地域ごとに定めた倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式です。原則として、路線価方式のような画地調整はありません。

    倍率方式
    倍率方式

    なお、固定資産税評価額は、所有者に市町村から送付される固定資産税課税物件明細書「評価額」欄に記載されています。

  • 不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解

    不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解

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    不動産を経済価値の観点から見るということはどういうこと?

    土地等の相続税評価には、不動産の特性と不動産市場に対する基本的理解が必要で、「利用区分(効用・用途)」、「不動産の態様(構成)」という二面的アプローチが評価手法を考えるうえで重要です。

    不動産(土地)の特性

    自然的特性(人間と関わりなく持っている特性)

    1. 土地の地理的位置は固定されていて、他の場所へ運ぶことは出来ません。従って、不動産取引では土地の権利が移動するだけで土地そのものは移動することはありません。
    2. 例えば、地震が起きて建物は壊れ瓦礫になっても、土地はその性質・面積を変えることはなく、半永久的に存続します。
    3. 土地の地理的位置、面積、形状、地盤等がまったく同じものはない(まったく同じ代用品はない)ので、状況類似の土地と比較考量することになります。

    このような性質から、その自然的手億世は固定的であって硬直的であると言われています。

    人文的特性(人間との関わりの中で生じてくる特性)

    1. 土地を利用するにあたり、その用途は宅地、工業地、農地等があり、さらに宅地については、住宅地、商業地など多様です。さらに、土地を自分で利用することもでき、人に貸すことも出来ます。また、その土地のうえに平屋や高層ビルを建てることもでき、さらに地下の利用が競合する場合もあるなど利用形態も多様です。また、その用途も時代の変遷により変化します。
    2. 土地は使いやすいようにまたは収益が上がるように、その面積や権利関係を変えることができます。
    3. 土地のある場所は変わらなくても、外部の状況が変化することによって、農地から宅地になったり、住宅地から商業地になったりします。

    このような社会的及び経済的位置の可変性等があるという性質から、その人文的特性は可変的であって伸縮的であると言われています。

    不動産市場の特性

    1. 不動産市場は、不動産によっては元本(所有権)市場と賃貸市場が成立し、それらの間には(不動産の価格が2倍になれば、賃貸料も2倍になるというような)相関関係があります。
    2. 不動産は用途が多様であり、買手と売手同士及びその相互間に競争原理が働くため、最有効使用を前提とした価格がリード役となり、価格が形成されます。

    土地等に対するアプローチの方法

    不動産(土地)と不動産市場の特性を理解できたとしても、ただ漫然と不動産を眺めていただけでは不動産を経済価値として捉える方法は見つかりません。それには、不動産と人間の生活と活動がどのように関わり合っているか(不動産のあり方)という観点が重要になります。その関係は次のように言い換えることができます。

    1. 人間が、その不動産をどのように利用することによって効用(快適性と収益性)を得ているか
    2. 人間が、その不動産を利用するためにどのような形態(有形的利用及び権利の態様)に作り上げてきたか

    という二面的な捉え方ということになります。

    上記1を具体的に説明すると、自然環境と交通の便を兼ね備えた土地は住宅の用に供することによって快適さを、また、駅前の集客力のある土地は店舗の用に供することによって収益を得るように利用するというように、不動産ごとにその利用の仕方が違ってきます。

    童謡に上記2については、住宅地は自ら利用し地上建物は低層のものとする、また、商業地費用を掛けて高層建築として第三者に賃貸する等、不動産ごとに有形的利用及び権利の態様が異なります。

    例えば、高度商業地には高層ビルが建ち、店舗等のテナントが入り、主として収益性が市場価格を左右しています。これに対し、高級住宅地では低層の住宅が建ち、主として快適性が市場価格を左右しています。そしてこの二つの市場には代替性がなく、別々の市場が形成されています。このように、その不動産に最もふさわしい利用の仕方(最有効使用)になるよう、用途と有形的利用及び権利の態様の二つの組み合わせを合理的に決定した結果が、具体的な不動産のあり方に現れているのです。この二面的に不動産を捉えるということ、つまり、その価値を効用(用途)と費用(有形的利用及び権利の態様)として捉えることにより、経済的価値の計算ができ、さらにそれが実際の不動産市場の需要に裏付けられれば、より客観性のある市場価値が求められるわけですから、この二面的な捉え方がいかに重要か分かると思います。

    例えば、路線価地域における不動産のあり方については、横軸に用途、縦軸に物的及び権利の態様をとり、【表1】のようにしてみるとよく分かります。

    具体的には横軸に、ここでは便宜上、宅地(商業地、住宅地、工業地)を取り上げることにします。この「利用区分」欄は宅地をどのような用途に利用するかを表しています。また、縦軸に自用地(更地)、貸付地(貸地)、借地権、貸家建付地、底地等の主な態様をとります。この「有形的利用及び権利の態様」欄は、宅地を利用するにあたり、不動産をどのように構成してきたかを具体的に示しています。なお、不動産をどのような用途に利用しているかという観点からの分類を「種別」、不動産をどのように構成してきたかという観点からの分類を「類型」ともいいます。

    【表1】路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

    路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方
    路線価地域(市街地的形態を形成する地域)における土地のあり方

    Ⅰ~Ⅷは不動産の類型ごとにそれぞれの不動産市場が個別にあることを表しています。ただし、それらは密接な相互関係があり、貸付地~底地の市場とも関連して市場を形成しています。なお、この地域にある農地・山林等は、宅地として価格が形成されますので、宅地比準方式で評価することに留意します。

    自用地は、土地のうえに存する権利が付着していない土地を自ら利用する場合その土地のことです。また、貸付地は、借地権の目的となっている土地のことです。借地権は、建物の所有を目的とした地上権または賃借権であり、底地は通常、借地権が設定されている土地をいいます。貸家建付地は、地主所有の建物を賃貸している場合の敷地をいいます。

    ところで、相続税の土地等の評価計算では、「土地及び土地のうえに存する権利の評価明細書(第1表)」で宅地の用途に応じた自用地(更地)の評価を行い、その第2表で土地のうえに存する権利の態様に応じた評価をすることになっています。これも土地等に対する二面的アプローチに従ったものといえます。

  • 相続人が取得した遺産を相続税の申告期限までに国等に贈与した場合の相続税非課税財産(措法70)

    相続人が取得した遺産を相続税の申告期限までに国等に贈与した場合の相続税非課税財産(措法70)

    図表Ⅵ-10 相続税の非課税財産となる遺産の寄附(贈与)

    相続税の非課税財産となる遺産の寄附(贈与)
    相続税の非課税財産となる遺産の寄附(贈与)
    相続税の非課税特例

    受贈法人が次の法人であり、相続税・贈与税の負担の不当な減少にならないなど一定の要件に該当する場合、相続人が相続税の申告期限までに贈与した遺産は相続税の課税価格に算入しない。

    1. 国又は地方公共団体
    2. 限定列挙された次の法人
    措法70条、施令40条の3
    1. 独立行政法人
    2. 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
    3. 一定の地方独立行政法人
    4. 公立大学法人
    5. 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興、共済事業団及び日本赤十字社
    6. 公益社団法人及び公益財団法人
    7. 一定の私立学校法人
    8. 社会福祉法人
    9. 更生保護法人
    10. 認定NPO法人

    相続税及び贈与税の不当な減少となる場合は、原則に戻り、相続人に相続税が課税される。

    相続又は遺贈により財産を取得した者が相続した財産を相続税の申告期限までに租税特別措置法70条所定の法人(限定列挙された公益性の高い事業を行う法人(措法70条、措令40条の3))に寄附した場合、寄附をした者やその親族・特別関係者の相続税・贈与税の負担が不当に減少する結果となる場合を除き、寄附をした財産の価額を相続税の課税価格に算入しないことができる(非課税となる)。

    なお、受贈法人(以下のA~J)が、次の要件に該当する場合は非課税にならず、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格に算入する(措法70②)。

    1. 贈与があった日から2年を経過した日までにA~Jの法人に該当しないこととなった場合
    2. 贈与により取得した財産を2年を経過した日までに公益目的事業の用に供していない場合
    【受贈法人】
    1. 国又は地方公共団体
    2. 限定列挙された次の法人

    A.独立行政法人

    B.国立大学法人及び大学共同利用機関法人

    C.一定の地方独立行政法人

    D.公立大学法人

    E.自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興、共済事業団及び日本赤十字社

    F.公益社団法人及び公益財団法人

    G.一定の私立学校法人

    H.社会福祉法人

    I.更生保護法人

    J.認定NPO法人

    図表Ⅵ-11 相続税の非課税特例

    相続税の非課税特例
    相続税の非課税特例

    制度創設の趣旨

    国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税規定は、昭和38年3月(法律第65号)に新設された。この規定ができる前は、相続又は遺贈により財産を取得した者が、公益の増進に寄与するところが著しいと認められる公益事業を行い、かつ、取得した財産をその公益事業の用に供する場合にその財産を相続税の非課税財産とする規定(相法12①3)があるのみであった。財産を相続又は遺贈により取得した相続人や受遺者が、取得した財産を公益事業の用に供するため公益法人などに贈与しても、その財産には相続税が課税されていた(1)

    (1)ただし、その贈与がその被相続人の意思によったことが遺言に準ずる書面等で明らかに推定された場合に限り、直接遺贈したものとして取り扱われた(直資90(例規):昭和35年10月1日 被相続人の意思に基づき公益法人を設立する場合等の相続税の取扱いについて)。

    この制度の立法の趣旨は次のとおりである(2)

    1. 相続開始直後に相続又は遺贈により取得した財産を公益法人などに贈与する場合は、被相続人の生前の意思に基づいて行われることも多いと推定されること
    2. 我が国の現状では、直教育や科学の振興等公益性の高い事業の保護育成が重要であること

    (2)参考:国税庁直税部「昭和38年直税関係改正税法の解説」。

    相続又は遺贈により取得した財産の範囲

    特例の対象となる「相続又は遺贈により取得した財産」(措通70-1-5)

    相続税の規定(相法3、7~9、第一章第3節)により相続又は遺贈により取得したものとみなされる生命保険金、退職金等の財産及び信託に関する権利を含む(ただし、集団投資信託等の信託に関する権利(相法9の2⑥ただし書き)及び受益者等が存在しない信託の受託者が遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利(相法9の4①②)を除く。)。

    特例の対象とならない「相続又は遺贈により取得した財産」(措通70-1-5)

    相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産で相続税法19条の規定により相続税の課税価格に加算されるもの並びに相続時精算課税の適用を受ける財産で相続税法21条の5第1項により課税価格に算入されるもの及び21条の16第1項の規定により相続又は遺贈により取得したとみなされるものは含まれない(相法19、21の15①、21の16①)。

    特例の対象となる「相続又は遺贈により取得した財産」(措通70-1-6)

    相続した建物等が火災により焼失したことにより取得した火災保険金(被相続人又は遺贈者が契約者であるものに限る)は、相続又は遺贈により取得した財産に該当するが、相続した財産を売却した代金は対象にならない。証券投資信託や貸付信託を解約した金銭も対象にならないため、証券投資信託や貸付信託を贈与する場合は特に注意が必要である(措通70-1-6)。

    公益の増進に著しく寄与するかどうかの判定

    公益事業の規模

    当該贈与又は遺贈を受けた法人の当該贈与又は遺贈に係る公益事業が、その事業の内容に応じ、その事業を営む地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有すること。

    この場合において、たとえば、次の1から10までに掲げる事業がその法人の主たる目的として営まれているときは、当該事業は、社会的存在として認識される程度の規模を有するものに該当するものとして取り扱う。

    1. 学校教育法(昭和22年法律第26号)1条《学校の範囲》に規定する学校を設置運営する事業
    2. 社会福祉法(昭和26年法律第45号)2条2項各号及び3項各号《定義》に規定する事業
    3. 更生保護事業法(平成7年法律第86号)2条1項《定義》に規定する更生保護事業
    4. 宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業
    5. 博物館法(昭和26年法律第285号)2条1項《定義》に規定する博物館を設置運営する事業
      (注)上記の博物館は、博物館法10条《登録》の規定による博物館としての登録を受けたものに限られているのであるから留意する。
    6. 図書館法(昭和25年法律第118号)2条1項《定義》に規定する図書館を設置運営する事業
    7. 30人以上の学生若しくは生徒(以下、「学生等」という。)に対して学資の支給若しくは貸与をし、又はこれらの者の修学を援助するための寄宿舎を設置運営する事業(学資の支給若しくは貸与の対象となる者又は寄宿舎の貸与の対象となる者が都道府県の範囲よりも狭い一定の地域内に住所を有する学生若しくは当該一定の地域内に所在する学校の学生等に限定されているものを除く。)
    8. 科学技術その他の学術に関する研究をお粉炒めの施設(以下、「研究施設」という。)を設置運営する事業又は当該学術に関する研究を行う者(以下、「研究者」という。)に対して助成金を支給する事業(助成金の支給の対象となる者が都道府県の範囲よりもさまい一定の地域内に住所を有する研究者又は当該一定の地域内に所在する研究施設の研究者に限定されているものを除く。)
    9. 学校教育法82条の2《専修学校》に規定する専修学校又は同法83条1項《各種学校》に規定する各種学校を設置運営する事業で、次の要件を具備するもの
      1. 同時に授業を受ける生徒定数は、原則として80人以上であること。
      2. 法人税法施行規則(昭和40年大蔵省令第12号)7条1号及び2号《学校において行う技芸の教授のうち収益事業に該当しないものの範囲》に定める要件
    10. 財団たる医療法人又は社団たる医療法人で出資持分の定めのないものの行う事業で、その法人の開設する医療施設が租税特別措置法施行令39条の25第1項1号に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすもの
    公益の分配

    当該贈与又は遺贈を受けた法人の事業の遂行により与えられる公益が、それを必要とする者の現在又は将来における勤務先、職業等により制限されることなく、公益を必要とする全ての者(やむを得ない場合においてはこれらの者から公平に選出された者)に与えられるなど公益の分配が適正に行われること。

    事業の営利性

    当該法人の当該贈与又は遺贈に係る公益事業について、その公益の対価がその事業の遂行に直接必要な経費と比べて過大でないことその他当該事業の経営が営利企業的に行われている事実がないこと。

    法令の遵守等

    当該法人の事業の運営につき、法令に違反する事実その他公益に反する事実がないこと。

  • 相続人が相続税の法定申告期限までに相続した財産を法人に贈与(寄附)した場合の課税関係

    相続人が相続税の法定申告期限までに相続した財産を法人に贈与(寄附)した場合の課税関係

    普通法人に寄付した場合

    図表Ⅵ-5 普通法人に対する遺産の寄附

    普通法人に寄附した場合
    普通法人に寄附した場合
    1. 寄附は相続税の計算には影響しない。
    2. 普通法人は受贈益に対し法人税を負担する(法法22②)。
    3. 法人は贈与税の納税義務者ではないので贈与税の課税対象にはならない(相法1条の4)。
    4. 普通法人が同族法人の場合、法人に贈与(寄附)をしたことにより株式又は出資の価額が増加した場合は、寄附した人から他の株主に対する贈与となる(相法9、相基通9-2)。
    5. 土地を贈与した場合など贈与した資産に含み益があれば含み益に対し譲渡所得が発生するので、相続人や受遺者が譲渡所得の納税義務者となる(所法59①一)。

    人格なき社団・財団に寄附した場合

    図表Ⅵ-6 人格なき社団・財団に対する遺産の寄附

    人格なき社団・財団に対する遺産の寄附
    人格なき社団・財団に対する遺産の寄附
    1. 寄附は相続税の計算に影響しない。
    2. 人格なき社団・財団は、個人とみなされ贈与税が課税される(相法66①)。
    3. 人格なき社団・財団が公益を目的とする事業を行っている等所定の要件を満たす場合、贈与税は非課税となる(相法21の3①三)。
    4. 贈与税が課税される場合は、法人税等の額に相当する額を控除する(相法66⑤)。
    5. 土地を贈与した場合など贈与した資産に含み益があれば含み益に対し譲渡所得が発生するので、相続人や受遺者が譲渡所得の納税義務者となる(所法59①一)。

    持分の定めのない法人に寄附した場合

    図表Ⅵ-7 持分の定めのない法人に対する遺産の寄附

    持分の定めのない法人に対する遺産の寄附
    持分の定めのない法人に対する遺産の寄附
    1. 原則、寄附は相続税の計算に影響しない。
    2. 寄附を受ける法人が34種の収益事業に対してだけ課税される法人の場合、法人税は非課税となる。
    3. 寄附を受ける法人が全ての所得に課税される法人である場合、受贈益は法人税等の課税対象となる。
    4. 原則、持分の定めのない法人には贈与税は課税されないが、贈与者の親族等の贈与税の負担の不当な減少となる場合は持分の定めない法人を個人とみなして贈与税が課税される(相法1の4、相法66④)。贈与税が課税される場合には、法人税等の額に相当する額を控除する(相法66⑤)。
    5. 利益を受ける者が親族等でなければ相続税法66条は適用されないので、同法65条により特別の利益を受ける者に贈与税が課税される(相法65①)。
    6. 土地を贈与した場合など贈与した資産に含み益があれば含み益に対し贈与者が時価で譲渡したものとみなして所得税が課税される(所法59①一)。贈与を受ける法人が公益認定委員会により認定された公益社団法人、公益財団法人等、その他公益を目的とする事業を行う法人である場合には、贈与の日から2年以内に公益目的事業に供するなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を得たときは、所得税法59条の1項1号の規定については贈与がなかったものとみなすこととされている(措法40①後段)。承認の却下や取消の際は、贈与者が時価で譲渡したものとみなして譲渡所得の所得税課税を受ける場合もある(措法40③)。

    持分の定めない法人に対する贈与税等の課税

    持分の定めのない法人に対し、贈与があり、かつ、葬よ斜塔の親族等の贈与税・相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、持分の定めない法人は個人とみなされ贈与税・相続税が課税される(相法66④)。受贈益に対し法人税等が課税されている場合は、贈与税等から当該法人税等を控除する(相法66④⑤)。持分の定めない法人を設立するために財産の提供があった場合も同様とする(相法66②)。

    【具体例】

    親Aが持分の定めない法人Xを設立し、収益マンションをXに寄贈した場合。Aの子BがXに寄贈された収益マンションを実質的に管理し、あたかもXが名義上の権利者にすぎないと認められる場合や、実質的にはBがXの支配を通じ寄贈された収益マンションを取得したと認められるような場合にXを個人とみなしてAから受贈された受贈益に対し贈与税が課税される。受贈益に対する法人税等は控除される。

    図表Ⅵ-8 持分の定めのない法人に対する贈与

    持分の定めのない法人に対する贈与
    持分の定めのない法人に対する贈与
    不当に減少することとなるときとは

    相続税法施行令においては、「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果とならない」場合を次のとおり定めている(1)(相令33③)。

    (1)昭和39年6月9日直審(資)24 直資77国税局長あて国税庁長官通達に定められていたものが平成20年の税制改正で法令化かつ明確化された。

    1 その運営組織が適正であると共に、その寄附行為、定款又は規則において、その役員等のうち親族関係を有する者及びこれたと次に掲げる特殊の関係があるもの(次号において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定めがあること。

    イ 当該親族関係を有する役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるもの

    ロ 当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外のもので当該役員等から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの

    ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

    ニ 当該親族関係を有する役員及びイからハまでに掲げる者の他、次に掲げる法人の法人税法2条15号《定義》に規定する役員((1)において「会社役員」という。)又は使用人である者

    1. 当該親族関係を有する役員等が会社役員となっている他の法人
    2. 当該親族関係を有する役員等及びイカラハまでに掲げる者並びにこれらの者と法人税法2条10号に規定する政令で定める特殊の関係にある法人を判定の基礎にした場合に同号に規定する同族会社に該当する他の法人

    2 当該法人に財産の贈与若しくは遺贈をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。

    3 その寄附行為、定款又は規則において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること。

    4 当該法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。

    持分の定めない法人から受ける利益に対する課税(相法65)

    贈与者等から持分の定めのない法人が贈与を受け、贈与者等の親族など特別関係者の贈与税・想像税の負担が不当に減少するときは、相続税法66条4項の規定により持分の定めない法人を個人とみなして相続税・贈与税が課税される。

    しかし、贈与者の親族等の贈与税や相続税の負担の不当な減少にならない場合でも持分の定めない法人を利用して特別の利益を特定の者に与えることも不可能ではなく、贈与者の親族等以外の特定の者に贈与や遺贈を行う際に、持分の定めない法人が利用される可能性もある。知人が支配している持分の定めない法人に財産を贈与する代わりに贈与者の息子を評議員や理事に就任させ贈与に見合った多額の報酬を受けさせる場合は相続税法66条4項により受贈法人を個人とみなして贈与税が課税される。これに対し、公には贈与を受け取ることができない人を持分の定めない法人の評議員に就任させ、法人に対し贈与を行うと共に就任させた評議員に多額の報酬を支払う場合は、贈与者と受益者に親族関係等の特別の関係がないため相続税法66条4項の規定は働かず、同法65条により当該評議員が受ける特別の利益(多額の報酬)に対し贈与者からの贈与があったものとみなされることとなる。特定の者とは、持分の定めない法人の設立者、社員、理事、監事、評議員をいう。

    この規定は、相続税法66条により持分の定めない法人が個人とみなされ贈与税・相続税を課税される場合を除いて適用される(相法65①)。

    図表Ⅵ-9 持分の定めのない法人を利用した贈与・遺贈

    持分の定めのない法人を利用した贈与・遺贈
    持分の定めのない法人を利用した贈与・遺贈
    特別の利益とは
    1. 施設の利用
    2. 余裕金の運用
    3. 解散した場合の残余財産の帰属
    4. 金銭の貸付
    5. 資産の譲渡
    6. 給与の支給
    7. 役員等の選任
    8. その他財産の運用及び事業の運営に関して法人から受ける特別の利益