法人が受益者となる受益者等課税信託の課税関係

POINT

  1. 受益者等課税信託において、委託者である居住者がその有する資産を信託し、法人が適正な対価を負担せずに受益者やみなし受益者となる場合には、その法人が対価を負担していないときは、信託目的財産を委託者である居住者から贈与により取得したものとされる。この場合、委託者である居住者は信託財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される(所法59①)。
  2. また、法人が適正な対価より低い対価を負担しているときは、その対価で委託者からその法人に対して譲渡したものとされる。この場合、その対価が時価の2分の1未満であるときは委託者である居住者は信託財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される(所法59①)。

受益者等課税信託において、委託者である居住者がその有する資産を信託し(信託設定を行い)、法人が適正な対価を負担せずに受益者やみなし受益者となる場合に、その法人が対価を負担していないときは、信託目的財産(信託に関する権利に係る資産)を委託者である居住者から贈与により取得したものとされ(所法67の3③)、その法人が適正な対価より低い対価を負担しているときは、その対価で委託者からその法人に対し譲渡したものとされる(所法67の3③)。

上記の場合において、法人に対する贈与又は低い価額による譲渡により信託目的財産(信託に関する権利に係る資産)の移転が行われたものとされるときは、その居住者に対する課税においては、所得税法59条の規定の適用がある。具体的には、信託設定が贈与とみなされる場合は、委託者は信託目的財産をその資産を信託したときにおける時価で譲渡したものとみなされ(所法59①、所基通67の3-1)、法人が負担した対価が信託財産の時価の2分の1未満であるときは時価で譲渡したものとみなされる(所法59②、所基通67の3-1)。法人が負担した対価が適正な対価である場合や時価の2分の1以上である場合には、その対価の額による信託目的財産(信託に関する権利に係る資産)の移転が行われたものとして贈与者である個人に対し譲渡所得課税が行われる。

受益者等課税信託が設定され、既存の受益者やみなし受益者が居住者であり、かつ、既存の受益者等以外に新たに受益者等となった法人が適正な対価を負担しなかったとき、居住者である一部の受益者等がざいしなくなった時に既存の受益者等である法人が適正な対価を負担しないで信託に関する権利について新たに利益を受ける者となるとき、受益者等課税信託が修了したときにおいて、信託の終了直前の受益者等が居住者であり、かつ、残余財産の給付を受けるべき又は帰属すべきものとなる法人が適正な対価を負担せずにその給付を受けるときも同様である(所法67の3④⑤⑥)。

なお、受益者等課税信託においては、受益者やみなし受益者・特定委託者が信託に関する権利の全部を有していない場合でも、受益者等が一ならばその信託に関する管理(信託目的財産・債務)の全部を有するものとみなされ、受益者等が二以上ならば、その信託に関する権利の全部をそれぞれの受益者等が有する権利の内容に応じて有するとみなされることとされている(所令197の3⑤)。