特定居住用宅地等の特例は、被相続人と親族が同居している家屋の敷地の用に供されている宅地等について適用される。このような宅地等のうち、いわゆる二世帯住宅の用に供されている宅地等については、同居の判定が問題となる。
構造上区分されていない二世帯住宅で、内部で行き来が可能な二世帯住宅については、全体を一つの住居と捉え、被相続人と親族が同居していたものと解し、全体について特定居住用宅地等に該当するとしてこの特例の適用が可能とされてきた。
他方、構造上区分された二世帯住宅の場合は、それぞれの区分ごとに独立した住居と捉え、被相続人が居住していた部分は他の要件を満たせば特定居住用宅地等に該当するものの、それ以外の部分は特定居住用宅地等には該当しないとしてこの特例の適用を認めない取扱いとなっていた。
外見上は同じ二世帯住宅であるのに内部の構造上の違いにより課税関係が異なることは不合理との指摘を踏まえ、平成26年1月1日以降に相続が開始したものについては、二世帯住宅であれば内部で行き来ができるか否かにかかわらず、全体として二世帯が同居しているものとしてこの特例の適用が可能とされ、法令上も明確化された。
具体的には、特定居住用宅地等の要件のうち同居要件について、「被相続人の親族が、相続開始の直前においてその宅地等の上に存するその被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(被相続人、その被相続人の配偶者又はその親族の居住の用に供されていた一定の部分に限る。)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住していること」とされた。
上記の「一棟の建物」には、いわゆる分譲マンションのように区分所有され、複数の所有権の目的となっているものもあり得る。例えば同じ分譲マンションの101に被相続人、707に親族が居住していた場合には、それぞれの専有部分が別々に取引される権利であり、いわゆる「二世帯住宅」とは同視できないと考えられるため、上記の「一定の部分」については、専有部分ごとに判断することとされている。
具体的には、次の部分に対応する宅地等がこの特例の対象となる。
- 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物である場合には、当該被相続人の居住の用に供されていた部分
- (1)以外の場合には、被相続人又は当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分
(注1)上記(1)の「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」とは、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とすることができる建物を指す。ただし、構造上区分所有しうる建物が当然に区分所有建物に該当するわけではなく、区分所有の意思を表示する必要があると解されていることから、通常は区分所有建物である旨の登記がされている建物となる。また、単なる共有の登記がされている建物はこれに含まれない。
(注2)租税特別措置法第69条の4第3項第2号では配偶者は親族と区別して規定されているが、上記(2)を規定している租税特別措置法施行令第40条の2第10項では配偶者は親族に含まれる。
(参考)建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)(抄)
(建物の区分所有)
第1条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。