JTMI 税理士法人 日本税務総研

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  • 死因贈与

    死因贈与

    POINT

    1. 個人が死因贈与により財産を取得したときは、相続税の課税対象となる。
    2. 法人が死因贈与により財産を取得したときは、受贈益に対し法人税が課税され、相続税の課税対象にはならない。被相続人が法人に時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される(相続人等(包括受遺者を含む)が被相続人の所得税を準確定申告する。)。

    個人が死因贈与により財産を取得したときは、相続税の課税対象となる(相法1の3)。

    死因贈与契約により法人が財産を取得したときには、受贈益に対し法人税が課税され、相続税の課税対象にはならない(法法22②)。法人に対する死因贈与は、言い換えれば、法人に対する無償譲渡である。法人に対する無償譲渡は、所得税法上は時価で譲渡したものとみなされる(所法59①)。死因贈与された財産に含み益があれば、死因贈与者である故人が法人に対し死因贈与した財産を時価で譲渡したとみなされ、譲渡所得の課税対象となる。故人が納税義務を負うので、相続人が準確定申告を行い故人に生じた納税義務を継承する(所法59①一、所法125、通法5)。準確定申告により確定した未払所得税は相続債務となる。死因贈与された財産が土地家屋である場合、被相続人が居住用の特別控除の適用要件を満たしていれば、準確定申告において3,000万円の特別控除を適用することも可能である(措法35)。

    図表Ⅰ-23 相続財産の一部を法人に遺贈した場合の課税関係図

    相続財産の一部を遺贈した場合の課税関係図
    相続財産の一部を遺贈した場合の課税関係図

    実務上の注意点 口頭による死因贈与契約

    死因贈与は遺贈に関する規定に従うが(民法554)、遺言の方式に関する規定は準用されない(最判昭32・5・21、民集1.5.732)。そこで、相続直前に口頭による死因贈与契約があったが相続税の申告はどうするか助言を求められることがある。

    口頭による死因贈与契約も私法上は有効だが、死因贈与契約が締結された事実は納税者が立証しなければならない。書面によらざる死因贈与契約は、契約当事者の一方が亡くなったときに効力が生ずる契約である。契約の効力が生ずるときに契約当事者の一方である贈与者は死亡し、贈与者の相続人が贈与の履行義務を負わなければならない。このように口頭による死因贈与契約は、受贈者以外に贈与契約があったことがわからなくなる可能性がある契約である。書面によらざる贈与契約であるから各当事者も撤回が可能である。履行の確実性を期すならば、あえて契約書等の証拠資料を作成しないという不安定な選択を行う蓋然性は低いと考えざるを得ない。口頭による死因贈与が実際に締結されていたか否かについては、贈与の動機、金額の多寡、受贈者との関係、口頭契約にとどまった理由等を総合勘案して判断することが必要となる。

  • 贈与税の配偶者控除

    贈与税の配偶者控除

    POINT

    1.贈与税の配偶者控除は、戸籍上婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫から妻、又は妻から夫に居住用の土地、借地権、底地、家屋を贈与した場合や居住用の不動産を取得するための金銭の贈与があった場合に、一定の要件を満たせば贈与税の課税価格から2,000万円を控除するという規定である。

    2.贈与を受けた不動産を贈与の翌年3月15日までに贈与を受けた配偶者自身が居住の用に供することが必要である。金銭贈与の場合には、贈与の翌年3月15日までに贈与を受けた配偶者が不動産を取得し、居住の用に供することが必要である。

    贈与の年において戸籍上の婚姻期間(注1)が20年以上である配偶者から専ら居住用の土地、借地権若しくは家屋で法施行地にあるもの(以下、「居住用不動産」という。)又は金銭を贈与により取得した者が、次の要件を満たすときは課税価額から2,000万円(注2)を控除する(相法21の6①)。

    1. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産を受贈者の自宅として使用し、かつ、引き続き居住する見込みであるとき
    2. 金銭の贈与であるときは、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その金銭で居住用の不動産を取得し、実際に自宅として使用を開始し、かつ、引き続き居住する見込みであるとき

    (注1)一度離婚して同一相手と再婚した場合は、通算して20年以上であれば適用できる(相令4の6①)。1年未満の端数は切り上げないので、贈与時点で満20年以上なければならない(相基通21の6-7)。

    (注2)「贈与により取得した居住用不動産の価額」と「贈与により取得した金銭のうち居住用不動産の取得に充てられた部分」の合計額が2,000万円未満の時はその合計額。

    居住用不動産の範囲

    贈与税の配偶者控除の適用を受けられる者(いか、「受贈配偶者」という。)が取得した次に掲げる土地・借地権(土地等)又は家屋は、居住用不動産に該当する(相基通21の6-1)。

    ① 受贈配偶者が取得した土地等又は家屋で、たとえば、その取得の日の属する年の翌年3月15日現在において、店舗兼住宅及び当該店舗兼住宅の敷地のように供されている土地等のように、その専ら居住の用に供している部分と居住の用以外の用に供されている部分がある場合における当該居住の用に供している部分の土地等及び家屋。

    なお、この場合において、その居住の用に供している部分の面積が、その土地等又は家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の9以上であるときは、その土地等又は家屋の全部を居住用不動産に該当するものとして差し支えない。

    ② 受贈配偶者がその者の専ら居住の用に供する家屋の在する土地等のみを取得した場合で、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該土地等。

    なお、この場合における土地等には、受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族の有する借地権の設定されている土地(いわゆる底地)を含むものであるから留意する(③において同じ)。

    ③ 受贈配偶者が店舗兼住宅の用に供する家屋の在する土地等のみを取得した場合で、当該受贈配偶者が当該家屋のうち住宅の部分の居住し、かつ、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該居住の用に供している部分の土地等。

    上記の居住用不動産の取得には家屋の増築も含まれる(相基通21の6-4)。

    また、居住用不動産には、居住用不動産が信託財産に含まれる信託に関する権利(信託財産に含まれる金銭により要件を満たす居住用不動産を取得場合も含む。ただし、集団投資信託、法人課税信託、退職年金等信託を除く。)が含まれる(相基通21の6-9)。

    実務対策

    贈与税の配偶者控除は、比較的多く利用されている制度ではあるが、自宅以外に不動産を所有していない者が配偶者に贈与する場合の相続税の節税効果はあまり大きくない。というのも、自宅の敷地は、配偶者が相続するときには小規模宅地の課税価格の特例(特定居住用不動産)に該当し330㎡までは課税額が80%減額されるから自宅敷地の評価額が2,000万円に相当する持分を満額贈与しても相続税の課税価格に換算すると400万円しか減額されず、節税効果は少ない。自宅家屋を贈与するとしても、家屋は時の経過により老朽化し評価が下がるので家屋を贈与することは節税という観点から見ると有効ではない。

    ただし、相続開始前3年以内の贈与であっても、贈与税の配偶者控除の額(最高2,000万円)までは、3年内加算をする必要がないので、その意味では課税価格に換算して400万円、実効税率20%で税額80万円と僅少ではあるが相続税の節税効果は認められる。

    長年居住した自宅を売却する場合、土地も家屋も夫婦で共有ならば、二人とも居住用資産の譲渡の特別控除(最高3,000万円)を受けることができるので、高額な不動産ならば贈与税の配偶者控除を使い妻と共有にした後、譲渡すると各々居住用資産の譲渡の特別控除を適用できる(措法35)。ただし、居住用資産の特別控除を各々別々に受けるためには家屋もごく一部でよいので妻名義にする必要があり、かつ、贈与税の配偶者控除を受けるためには、贈与を行った翌年3月15日まで所有し居住しておく必要があることに留意しなければならない(土地を家屋とともに取得しないと不動産取得税の軽減がない。)。

  • 相続時精算課税制度の申告にあたり過小評価が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額

    相続時精算課税制度の申告にあたり過小評価が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額

    Aは平成25年1月1日に死亡した。Aの相続税の申告書作成のため過去の贈与の有無を確認したところ、平成15年12月21日に相続時精算課税制度を選択し甲土地を長男Bに贈与していたことが判明した。担当税理士が精査したところ、甲土地の評価額に誤りがあった。正しくは3,000万円とすべきところを2,370万円として相続時精算課税を選択し贈与税の申告がなされていた。贈与税の除斥期間である6年は経過しているため修正申告を提出することができない。相続税の申告書に記載する相続時精算課税適用財産の価額は、贈与税の申告書に記載された金額でよいか。

    特定贈与者から相続又は遺贈により取得した相続時精算課税制度適用者は、特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税制度適用財産の価額を相続税の課税価格に加算する。加算する相続時精算課税制度適用の価額は、贈与税の申告書に記載されている価額ではなく、贈与税の課税価格の計算の基礎に算入される財産に係る贈与時の価額である(相法21の15①、相基通21の15-1・2)。

  • 贈与税の3年内加算が適用されない特定贈与財産とは

    贈与税の3年内加算が適用されない特定贈与財産とは

    POINT

    1.特定贈与財産とは、婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者が被相続人から贈与により取得した居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭で次のものをいう。

    1. 相続開始の年の前年以前に贈与が行われている場合で、被相続人の配偶者が贈与税の配偶者控除(相法21の6①)の適用を受けているときは、配偶者控除を受けた金額(最高2,000万円)に相当する部分
    2. 相続開始の年に行われた贈与である場合は、過去に被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けたことがない配偶者が、被相続人から贈与を受けた居住用不動産又は金銭のうち、贈与税の配偶者控除の特例があるものとした場合に控除されることとなる金額(最高2,000万円)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分

    2.特定贈与財産は3年以内加算の規定(相法21の2④)が適用されない。

    相続税の申告にあたり、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産がある場合は、贈与により取得した財産のうち贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除く。)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす。また、相続税の課税価格に加算された贈与財産に対し課税された贈与税額を相続税額から控除する。控除すべき贈与税額が相続税額を上回ることがあっても、納付すべき相続税額が零となるだけで控除不足の贈与税は還付されない(相法19①)。

    ここでいう特定贈与財産とは、婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者が被相続人から贈与により取得した居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭で次のものをいう(相法19②)。

    イ 相続開始の年の前年以前に贈与が行われている場合で、被相続人の配偶者が贈与を受けた日の年分の贈与税につき贈与税の配偶者控除(相法21の6①)の適用を受けているときは、配偶者控除を受けた金額(最高2,000万円)に相当する部分(相法19②一)。

    ロ 相続開始の年に行われた贈与である場合は、贈与時に被相続人との婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者(すでに被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けたことがないものに限る。)が、相続開始の年において、被相続人から贈与を受けた居住用不動産又は金銭のうち、贈与税の配偶者控除の特例があるものとした場合に控除されることとなる金額(2,000万円が限度となる。)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分。

    相続開始の年の前年に、評価額2,500万円の自宅の敷地を被相続人が配偶者に贈与し、贈与税の配偶者控除(相法21の6)2,000万円と基礎控除110万円を控除し、贈与税の課税価格390万円に対する贈与税53万円を納税していたケースでは、特定贈与財産2,000万円を除く500万円を相続税の課税価格に加算して申告することとなる。

    同様の事例で、贈与税の配偶者控除の適用がある贈与が行われた同年に相続が開始したときは、贈与税の配偶者控除の申告を行う前に相続が開始してしまったのであるが、贈与税の配偶者控除の適用があるものとして控除されることとなる金額(2,000万円が限度となる。)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分(上記のケースでは2,000万円)が特定贈与財産となる。この結果、500万円だけが相続税の課税価格に加算される。この場合、贈与を受けた配偶者は、贈与を受けた年(同時に相続が開始した年でもある)の翌年3月15日まで、当該自宅に居住を継続することが必要である。なお、選択した2,000万円は3年内加算の規定(相法21の2④)が適用されないので、相続税の申告後、贈与税の配偶者控除の適用をしないこととなった場合でも贈与税の申告が必要である(相基通19-9)。

    図表Ⅰ-22 要添付書類

    相続開始の年に受けた特定贈与財産がある場合戸籍の付票の写し
    (被相続人からの贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたものに限る。)
    居住用不動産の登記事項証明書
    (居住用不動産の贈与を受けている場合)
  • 贈与税の3年内加算と相続開始の年における被相続人からの贈与

    贈与税の3年内加算と相続開始の年における被相続人からの贈与

    POINT

    1. 贈与税の3年内加算の対象となる者は「相続又は遺贈により財産を取得した者」である。法定相続人であっても、相続又は遺贈により財産を取得しない者は対象とならない。法定相続人でなくても、遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与により取得した財産は、加算の対象となる。
    2. 相続開始の年において被相続人から取得した財産は、贈与税の配偶者控除の特例の適用を受ける財産(特定贈与財産)を除き、相続税の課税価格に算入する。贈与税の申告を要しない。

    相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年に以内に被相続人から贈与により取得した財産があるときは、贈与税の配偶者控除を受けた財産(これを特定贈与財産という。)を除き、相続税の計算上、受贈財産の価額を相続財産に加算して相続税を算出し、贈与税額を控除することとされている(以下、「3年内加算」という。)(相法19)。贈与により取得した財産が贈与税の基礎控除以下であっても加算する。

    ただし、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年において被相続人から贈与により取得した財産(特定贈与財産を除く。)で相続税法19条《相続開始3年以内に贈与があった場合の相続税額》の規定を受けるものは、受贈財産の課税価額を相続税の課税価格に算入するのみで、贈与税の課税価格に算入せず、贈与税額の控除もしないこととされている(相法21の2④)。この規定の趣旨は技術的なものである。

    相続開始の年の贈与財産を相続財産に加算し、贈与税額を控除しようとすると、相よ税額を確定する必要がある。被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者の相続開始の年の贈与税額は、暦年贈与課税が累進税率を採用していることから、その者のその年の受贈財産の総額が確定する12月31日まで待たなければ確定しない。相続開始の年において被相続人から贈与により取得した財産(特定贈与財産を除く)は、単に相続財産に加算する方法が最も簡明な方法である。

    加算される贈与により取得した財産の価額とは、財産を取得したときにおける時価により評価した価額をいう(相基通19-1)。要は、贈与税の申告を行った価額をそのまま加算するわけである。

    相続の開始前3年以内とは、相続の開始の日から遡って3年目の応当日から相続開始の日までの間をいう(相基通19-2)。

    相続又は遺贈により財産(生命保険等のみなし財産を含む。)を取得しなかった者は、3年以内加算の対象とならないのであるが、相続時精算課税適用者については、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合であっても、相続時精算課税適用者が、相続時精算課税の選択に係る年より前に特定贈与者から財産の贈与を受けていたときには、3年以内加算の対象となる(相基通19-3)。これは相続税法21条の16条1項の規定により、相続時精算課税の適用を受ける財産は相続又は遺贈により取得したものとみなされることによる(相基通19-11)。

    相続時精算課税の適用者が特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した場合は、3年以内加算ではなく、相続時精算課税制度適用分からの贈与が相続財産に加算されるが(相法21の15①又は相法21の16①)、相続開始前3年以内の贈与ではあるが、贈与を受けた時点は被相続人が特定贈与者でない場合もあるので注意が必要である。たとえば相続開始間2年以内に相続時精算課税選択届出書を提出しているが、精算課税選択届出書を提出する以前の年分につき暦年贈与の適用があり、当該贈与の時点が相続開始前3年以内なら加算対象となる。

    図表Ⅰ-20 相続時精算課税適用者に3年以内加算が生ずるケース

    相続時精算課税適用者に3年以内加算が生ずるケース
    相続時精算課税適用者に3年以内加算が生ずるケース

    相続税の無制限納税義務者は、相続又は遺贈により取得したすべての財産が相続税の課税対象とされているが、相続開始前3年以内の贈与加算の規定は加算する財産を贈与税の課税価格の基礎に算入されるものに限っている(相法11の2①、19①)。このことから、相続開始時点で無制限納税義務者であったものでも、3年以内加算の対象となる贈与を受けたときに制限納税義務者であり、法施行地以外の財産を取得した場合など、贈与税の課税価格に算入されないこととされている財産は、相続開始前3年以内の贈与であっても相続税の課税価格に加算されない(相法21の2②、相基通19-4)。

    図表Ⅰ-21 3年内贈与加算一覧表

    納税義務者贈与により取得した財産3年内加算有無
    相続又は遺贈により財産を取得した者(みなし相続財産を取得した者を含む。)その年に取得した財産の価額が基礎控除以下である場合加算する
    相続開始の年に受けた財産の価額は贈与税の課税価額に加算しないが相続税の課税価格に加算する
    扶養義務者相互間において生活費等に充てるためにした通常必要な贈与加算しない(相法21の3)
    公益事業用財産の贈与
    特定公益信託からの贈与
    特別障害者が受益者となる信託財産のうち6,000万円又は3,000万円までの金額加算しない(相法21の4)
    特定贈与財産(婚姻期間20値二条の配偶者に対する居住用資産・購入資金の贈与)非課税となる2,000万円までの金額加算しない(相法19②)
    制限納税義務者が取得した法施行地以外に所在する財産加算しない(相法22の2②)
  • 相続税法における特別障害者と特定一般障害者

    相続税法における特別障害者と特定一般障害者

    POINT

    障害者のうち、相続税法における特別障害者と一般特別障害者の要件は次のとおりである。

    特別障害者とは次の(1)から(8)までに該当する者をいう(相法19の4②、相令4の4②④、相基通19の4-2、19の4-3)。一般障害者とは、次の(2)から(7)までに該当する、特別障害者以外の者をいう(相法19の4②、相令4の4①、相基通19の4-1、19の4-3)。特定一般障害者とは、(2)及び(3)の特定一般障害者要件に該当する者をいう。

    (1)常に精神上の障害により事理を弁護する能力を欠く状態にある人。
    この人は、特別障害者に該当する。

    (2)児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人。
    このうち重度の知的障害と判定された人は、特別障害者に該当し、中軽度の知的障害者と判定された人は、特定一般障害者に該当する。

    (3)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人。
    このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者に該当し、2級又は3級と記載されている人は、特定一般障害者に該当する。

    (4)身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害の程度が3級から6級までである人として記載されているい人は一般障害者に、障害の程度が1級又は2級と記載されている人は特別障害者に該当する。

    (5)戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人で精神上又は身体上の障害の程度が次に掲げる人。

    1. 恩給法に定める第四項症から第六項症までの障害がある者
    2. 恩給法別表第一号表の三に定める障害があるもの
    3. 傷病について厚生労働大臣が療養の必要があると認定したもの
    4. 旧恩給法施行令に定める程度の障害があるもの
      このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第三項症までの人は、特別障害者に該当する。

    (6)常に就床を要し、複雑な介護を必要とする人のうち精神又は身体の障害の程度が(1)又は(4)に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人。
    このうち特別障害者に準ずるものとして認定を受けている人は特別障害者に該当する。

    (7)精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)又は(4)に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人。
    このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者に該当する。

    (8)原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人。
    この人は、特別障害者に該当する。

    特別障害者と一般障害者の要件は障害者控除(相法19の4)の適用において、特別障害者と特定一般障害者の要件は特定障害者に対する贈与税の非課税(相法21の4)の適用において必要となる。

  • 特定障害者に対する贈与税の非課税制度

    特定障害者に対する贈与税の非課税制度

    POINT

    信託制度を活用し特別障害者及び下段に述べる特定一般障害者(以下、あわせて「特定障害者」という。)の生活の安定を図る制度である。個人(委託者)が財産を信託銀行に信託し、特定障害者を受益者とした場合でも、相続税法は委託者である個人から受益者である特定障害者に信託財産が贈与されたものとみなしている(相法9の2①)。当規定は、特定障害者の生活の安定を図るために行われる一定の要件を具備する信託契約(特定障害者扶養信託契約)であれば、特別障害者については6,000万円まで、特定一般障害者については3,000万円までの信託財産については非課税とする規定である。委託者は個人であれば足り、扶養親族等の制限はない(相法21の4)。

    特定障害者扶養信託契約で、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター又は精神保健指定医の判定により中軽度の知的障害者とされた者及び精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級又は3級である者として記載されている精神障害者(以下、「特定一般障害者」という。)を受益者とする一定の要件を備えた特定障害者扶養信託契約について3,000万円までの信託財産について贈与税を非課税とする規定が追加された。

    特定障害者に対する贈与税の非課税制度の対象となるのは、特定障害者が信託受益権に基づいて受託者である信託銀行から、定期的に生活資金の給付を受けることができることを目的として設定される他益信託である。この規定の適用を受けるためには特定障害者が「障害者非課税信託申告書」を受託者の営業所等を通じて納税地の所轄税務署長に提出することが必要である。非課税となる金額の限度額は、受益者一人につき、特別障害者については6,000万円、特定一般障害者については3,000万円とされている。受益者の必要に応じ、定期的に生活又は療養資金の給付を行うことが必要である。そのため、信託できる財産は、金銭、有価証券、金銭債権、その他の6種類に限定されている。贈与税の非課税制度であるから、委託者は個人に限られるが相続税の障害者控除とは異なり、委託者は個人であれば足り、扶養親族等の制限はない(相法21の4①、相令4の9、相基通21の4-1)。非課税規定であるから当然のことながら委託者の相続税の申告において受益者である特定障害者が他の財産を相続又は遺贈により取得したとしても本特例の贈与(6,000万円又は3,000万円まで)は3年内加算の対象とならない。

    本条の規定による贈与税の非課税制度は次の特色を有する。

    ① 特定障害者に対する贈与税の非課税規定の対象となる信託は、委託者が委託者以外の一人の特定障害者を信託の全部についての受益者として財産の信託をする他益信託に限られる。

    (注1)特定障害者が財産の贈与を受けた後、自己の財産となった受贈財産を信託して自らが受益者となる自益信託を設定しても本特例の適用はない。

    (注2)特定障害者が信託の全部についての受益者とされなければならないから、他に受益者を指定することはできない。残余財産受益者も受益者としての権利を有する者であるから、たとえば、社会福祉法人等を残余財産受益者に指定するとこの非課税制度の要件を欠くこととなる。他に受益者が存在すると受益者としての権利を行使され、信託財産の運用等に影響力を行使されるおそれがあるからである。残余財産帰属者は信託の終了時に初めて受益者としての権利を有することになるので、残余財産帰属者をあらかじめ指定しても特定障害者扶養信託契約の要件を欠くことにはならず、社会福祉法人等を残余財産帰属者に指定することは可能と解される(信法183)。なお、特定障害者がその意思で受益権を相続させ又は遺贈することは特定障害者扶養信託の要件を欠くものではない(相令4の11②)。

    (注3)特定障害者が一定の年齢に達するまでは受益権を行使できないなど、受益権に停止条件を付した場合は、受益者としての権利を現に有する者に該当しないから本条の適用はない(相法21の4、9の2②)。

    ② 受託者は信託銀行又は信託業務を兼営する銀行である場合に限り適用がある(相令4の8)。

    ③ 信託は一つの信託銀行等につき一店舗に限られている。

    ④ 委託者は、受益者となる特定障害者以外の者であれば誰でもよく、特定障害者の親族や扶養義務者に限定されていない。

    ⑤ 一人の特定障害者のために二人以上の者が二つ以上の信磔刑約に基づいて信託設定した場合でも、二つの信託財産の総額が6,000万円(特定一般障害者の場合は3,000万円)までは本特例の適用がある。

    ⑥ 信託財産は金銭、有価証券、金銭債権、立木及びその立木の生立する土地(立木と一緒に信託されるときに限られる。)、継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産、特定障害者の居住の用に供される不動産(他の財産のいずれかと共に信託される場合に限られる。)に限定されている(相令4の10)。

    ⑦ 相続時精算課税制度の対象となる財産の種類及び金額には制限がなく信託受益権も対象となる。相続時精算か税制度を適用して特定贈与者から贈与を受ける場合においても本規定の適用は可能である(相法21の11)。

    ⑧ 信託財産から生ずる収益は受益者に帰属するものとみなされ、所得税の課税対象となる(所法13)。信託財産が不動産の場合は不動産所得、貸付金の場合は雑所得、合同運用金銭信託の場合には利子所得として所得税が課税される。

    ⑨ 平成25年3月31日以前に設定された信託契約で受益者である特定障害者が死亡した場合には、死亡後6月を経過する日に終了することとされていることが必要である(相法21の4、相令4の11)。平成25年4月1日以後に設定された信託契約では、特定障害者扶養信託契約の終了時期を、特定障害者の死亡の日とされていることが必要である。特定障害者の相続人が取得する受益権は特定障害者から遺贈により取得したものとみなされる(相法9の2②)。

    ⑩ 特定障害者扶養信託契約に基づく信託は、特定障害者が死亡し信託受益権を相続又は遺贈により取得した者が行う解除を除き、取消し又は解除をすることができず、信託期間及び受益者の変更をすることができない旨、定めることが必要である(相令4の11)。

    ⑪ 信託された財産の一部が信託法11条の許害行為取消権により取り消された場合又は遺留分による減殺の請求があったときには、特定障害者は遅滞なく「障害者非課税信託取消申告書」を受託者の営業所等を経由し納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相令4の13)。

    ⑫ 特定障害者扶養信託契約の締結が無効であったこと又は取り消すことができる行為であったことにより取り消され又は信託財産の全部につき遺留分減殺請求の行使があり、信託受益権がないこととなった場合には、同様に「障害者非課税信託廃止届出書」を提出しなければならない(相令4の14①)。

    図表Ⅰ-18 特定障害者に対する贈与税の非課税制度

    特定障害者に対する贈与税の非課税制度
    特定障害者に対する贈与税の非課税制度

    制度の背景

    この制度の目的は信託制度を活用し特定障害者の生活の安定を図ることである。障害者を扶養している親や親族が亡くなった場合に遺言があれば遺言に基づき障害者は必要な財産を取得することができる。この場合、障害者が自らの財産を管理することができなければ、遺贈を受け若しくは相続した財産が他の者の利益のために費消されるおそれもないとはいえない。障害者が成年後見制度の被後見人になっていれば、裁判所は原則として法定相続分を障害者が相続するように指導し、その後の財産管理も裁判所の後見の下に行われるが、後見人の不祥事等により障害者の財産が減少するおそれもないとはいえない。

    遺言がなく、被後見人になっていなければ、遺産分割協議において障害者が他の相続人と同様に遺産を相続するとは限らない。他の相続人が障害者の扶養を行うことを条件に多くの財産を取得し、障害者の取得する財産がほとんどないという分割協議が成立する可能性も否めない。このため特に生活能力に乏しい重度の心身障害者に対しては、生前に財産を贈与して親の死後における生活の安定を確保する方法が有効であるが、贈与された財産を障害者のために安全に運用管理してくれる者がいないとせっかく贈与した財産が他の者の利益のために使用されるおそれは払拭できない。残念なことであるが、障害者に成年後見人が付されている場合でさえその可能性は残されている。

    このようなことがないように、贈与した財産を信用力のある第三者に託し、確実、安全にかつ長期間にわたり運用を任せ、特定障害者の生活費や療養費の必要に応じ運用益や元本(贈与した財産)をできるだけ年々安定的に交付してもらう方法を講じることが有効な対処法となる。このような法法として信託という法形式がある。

    信託には自益信託と他益信託がある。自益信託とは、委託者Sが財産を受託者Tに信託し受益者としてSを指定する信託である。Sは、委託者であると同時に受益者でもあるので、(所有権は受託者に移転しているが)本来自分の財産である信託財産の収益を受益者として収受する。このように委託者と受益者が同一である信託を自益信託という。自益信託においては、信託財産は元々自分の財産であるから税法上は信託設定による財産の移動を認識しない。

    これに対し、受益者と委託者が異なる場合を他益信託という。Sが信託した財産から生ずる収益を他人である受益者Bが受け取るので他益信託というのである。他益信託の実質は贈与である。

    相続税法は信託から生ずる利益を享受する受益者が信託財産・債務を有しているものとみなす規定を置き(相法9の2⑥)、適正な対価を負担せずに信託の受益者となる者は、信託の効力が生じたときに、委託者から信託に関する権利の贈与を受けたものとみなしている(相法9の2①)。このため、親や親族又は篤志家が特定障害者を受益者として財産を信託すると、相続税法では信託に関する権利を委託者から受益者である特定障害者に対し贈与したものとみなされる。特定障害者に対する贈与税の非課税規定は、贈与したとみなされる信託に関する権利(受益権)を6,000万円又は3,000万円まで非課税とする規定である。

    図表Ⅰ-19 特定障害者扶養信託の要件等

    委託者(贈与者)個人
    受益者(特別障害者・特定一般障害者)相続税法21条の4第1項に規定する特別障害者又は特定一般障害者
    信託財産の範囲(相令4の10)①金銭、②有価証券、③金銭債権、④立木の生立する土地(その立木と共に信託される者に限る。)、⑤継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産、⑥特別障害者の居住の用に供される不動産(①か⑤までに掲げる財産のいずれかの財産と共に信託されるものに限る。)(相令4の10)

















    4
    の11
    信託期間平成25年4月1日以後に設定された信託契約では、受益者である特別障害者の死亡の日に終了するとされていること。
    信託財産の交付により信託財産がなくなるときにも終了する。
    あらかじめ信託期間を定めることはできない。
    追加信託特別障害者を受益者とする場合は受益者一人について6,000万円、特定一般障害者を受益者にする場合は3,000万円を限度に追加信託が可能。
    解約、取消し、変更信託期間中の解約、取消しは特別の場合を除いてできない。受益者を変更することもできない。
    生活費・療養費の交付受益者である特定障害者の生活・療養の必要に応じ、信託財産から金銭を定期的に交付する。
    将来必要が生じた時点で交付法法を決めること、交付方法を変更することもできる。
    信託財産の管理・運用住宅財産は、信託銀行が安定的な収益確保を目的として指定金銭信託受益権等で運用する。
    また、信託財産の運用収益は、信託財産に加えられる。
    税金信託財産の運用により生じる収益は、受益者である特定障害者の所得となり所得税が課税される。

    (注)特別障害者と特定一般障害者を合わせて特定障害者という。

  • 特定公益信託で財務大臣の指定するものから交付される特定の金品の非課税規定(相法21の3①四)

    特定公益信託で財務大臣の指定するものから交付される特定の金品の非課税規定(相法21の3①四)

    POINT

    特定公益信託で財務大臣が指定する学術に関する顕著な貢献を表彰するもの若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものから交付を受ける金品又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とするものから交付を受ける金品は、委託者が個人である場合には贈与とみなされるが、委託者が法人である場合の所得税と同様に贈与税を課税しない規定を設けている。

    財務大臣が指定した特定公益信託から奨学金などを支給されたときに受給者に贈与税が課税されないための規定である。

    相続税法では公益信託の寄託者は特定委託者とみなされるので、公益信託から金品を受領すると、委託者が個人の場合には、委託者から贈与があったものとして取り扱われるのが原則である(相法付則24項)。公益性の高い学術奨励金や奨学金などを贈与税の課税対象とすることは好ましくないので、特定公益信託から支給される学術貢献賞賞金や学術研究奨励金のうち財務大臣が指定するものや、学生、生徒に対する学資の支給を目的とする特定公益信託からの奨学金は贈与税の非課税財産としているのである(なお、一時所得の非課税規定と異なり芸術貢献賞賞金は非課税とされていない。)。

    なお、委託者が法人の場合は同様の理由で、委託者である法人から個人に対する贈与となり、公益信託から奨学金などを支給される者に対し一時所得の課税対象とするのが原則である(所法34、所基通34-1(五))。特定公益信託の委託者が法人の場合は、学術貢献表彰及び芸術貢献表彰又は学術研究奨励を目的とする特定公益信託から交付される金品で財務大臣の指定するもの及び奨学金は所得税が非課税とされている(所法9①十三)。

    公益信託とは、民間の資金を広く一般のために役立てるための制度であり、信託法258条に規定する受益所の定めのない信託のうち、学術、技芸、慈善、祭祀その他公益を目的とするものであって、受託者において主務官庁の許可を受けたものである(公益信託ニ関スル法律1、2①)。主務官庁が信託銀行等に引受けを許可する信託は平成6年9月13日に公益法人等監督事務連絡会議決定が定めた「公益信託の引受け許可審査基準等について(巻末:参考通達等2 参照)」に基づき審査され(同基準には残余財産の帰属についての付則は明記されていないが)、現実に引受けを許可される公益信託は、残余財産が委託者等の手元に戻る可能性があるものはない。公益信託として主務官庁から許可されるものは、すべて税法が定める特定公益信託の要件を具備している。

    現実に公益信託は、医療や福祉分野、自然科学や人文科学の研究分野、自然環境保全活動など幅広い分野で活用されている。公益信託には、是姿勢条の区分として「特定公益信託」と「認定特定公益信託」が規定されている。特定公益信託のうち、科学研究助成、学校教育支援、福祉など11の特定分野での信託目的を有するものであること、及びその目的に関し相当と認められる業績が持続できることについて主務大臣の認定を受け、かつ、その認定を受けた日の翌日から五年を経過していないものを「認定特定公益信託」といい、税制上の優遇措置がとられている。

    本規定は、特定公益信託のうち財務大臣の指定するものから交付される特定の金品に係る贈与税の非課税規定である。

    特定公益信託とは

    公益信託のうち、次の①②の要件のすべてを満たす公益信託が税制上の特典のある特定公益信託である(所令217の①、法令77の2①、措令40の4①)。

    ① 受託者が信託銀行であること

    ② 次に掲げる事項が信託行為により明らかであること

    イ 信託終了の場合において、信託財産が国若しくは地方公共団体に帰属し、又は類似の目的のための公益信託として継続するものであること

    ロ 合意による終了ができないものであること

    ハ 信託財産として受け入れる資産は、金銭に限られるものであること

    ニ 信託財産の運用は、次に掲げる方法に限られるものであること

    1. 預金又は貯金
    2. 国債、地方債、特別の法律により法人の発行する債券又は貸付信託の受益証券
    3. 貸付信託の受益証券の取得
    4. 合同運用信託の信託

    ホ 信託管理人が指定されるものであること

    ヘ 受託者が信託財産の処分を行う場合には、学識経験者で構成される運営委員会の意見を聞かなければならないものであること

    ト 信託管理人及び運営委員会に対してその信託財産から支払われる報酬の額は、その任務の遂行のために通常必要な費用の額を超えないものであること

    チ 受託者が信託財産から受ける報酬の額は、通常必要な額を超えないものであること

    以上の要件を満たすことについて、主務大臣の証明を受けもの。

    認定特定公益信託とは

    特定公益信託のうち、特に公益性の高い次に掲げる一又は二以上の信託目的を持ち、信託目的に関し相当と認められる業績が持続できることにつき主務大臣の認定を受けたものをいう(損院体を受けた日の翌日から五年を経過していないものに限る。)(所令217の2、法令77の2③)。

    1. 科学技術(自然科学に係るものに限る。)に関する試験研究を行う者に対する助成金の支給
    2. 人文科学の諸領域について、優れた研究を行う者に対する助成金の支給
    3. 学校教育法第一条《定義》に規定する学校における教育に対する助成
    4. 学生又は生徒に対する学資の支給又は貸与
    5. 芸術の普及向上に関する業務(助成金の支給に限る。)を行うこと
    6. 文化財保護法第二条第一項《定義》に規定する文化財の保存及び活用に関する業務(助成金の支給に限る。)を行うこと
    7. 開発途上にある海外の地域に対する経済協力(技術協力を含む。)に資する資金の贈与
    8. 自然環境の保全のため野生動植物の保護繁殖に関する業務を行うことを主たる目的とする法人で当該業務に関し国又は地方公共団体の委託を受けているもの(これに準ずるものとして財務省令で定める者を含む。)に対する助成金の支給
    9. 優れた自然環境の保全のためその自然環境の保全及び活用に関する業務(助成金の支給に限る。)を行うこと
    10. 国土の緑化事業の推進(助成金の支給に限る。)
    11. 社会福祉を目的とする事業に対する助成

    図表Ⅰ-15 公益信託に係る税務

    概要公益信託特定公益信託認定特定公益信託
    公益信託は、信託法上受益者のいない信託であるが、相続税法は附則24を置き、すべての公益信託の委託者を特定委託者としてみなすこととし、法人課税信託である受益者等の存しない信託に該当しないものとしている。これは、今後の公益信託制度の見直し等を見据え、当面の措置として従前の取り扱いが維持されたものである。公益信託法1条+引受許可審査基準
    *引受認可基準には残余財産の帰属についての制限は明記されていないが、現実に許可される公益信託は、残余財産が委託者等の手元に戻る可能性があるものはない。公益信託として主務官庁から許可されるものは、すべて税法が定める特定公益信託の要件を具備している。
    所令217の2①② 所令217の2③
    法令77の4①② 法令77の4③
    信託財産の帰属の定め・解除不可・受託財産は金銭のみ。運用限定。信託管理人+学識者の助言。信託報酬も制限。目的の限定(助成型活動)。業績が持続可能。主務大臣の認定を要求。
    財産拠出時





    委託者への税制優遇(所得税法上の寄付金控除・税額控除)なしなしあり(所法78③(信託時の拠出も対象))
    相続・遺贈を受けた財産を公益信託に拠出した場合なしなし(所令217の2①三により、金銭以外の財産受け入れは不可)
    受託者・受給者(≠受益者)等への課税なし。公益信託の委託者は特定委託者とみなされるため、公益信託は受益者等の存在しない信託に該当せず、他に植木社が存しなければ、信託財産の移転は認識されず受託者や受給者(受益者ではない)には課税されない。





    委託者への税制優遇(法人税法上の寄付金優遇税制)なし。一般寄付金として損金算入限度額の範囲で損金算入することができる。あり。特定公益増進法人に対する寄付金と同じ扱いを受けることができ、一般寄付金の損金算入限度額とは別枠で一般寄付金の損金算入と同額まで損金算入が認められる(法法37⑤③三)。
    信託収益時





    投資所得非課税(所法11②)
    利子(源泉所得税)
    キャピタルゲイン課税非課税(所法11②) 所令217の2四により運用可能資産が限定されているので、キャピタルゲイン課税の問題は生じない(所基通33-1、祖法37の15)。





    投資所得 課税(法法附則19の2=委託者課税)非課税(法法12①②)
    利子(源泉所得税) 非課税(所法11②)
    キャピタルゲイン課税 課税(法法附則19の2=委託者課税) 法令77の4①四で運用可能資産が限定されているので、キャピタルゲイン課税の問題は生じない。
    公益目的給付時(奨学金等、受給者に特定しうる経済的利益が生じている場合には委託者からの贈与とみなされる。)





    受給者個人贈与税課税(相法9)学術貢献の表彰、学術研究の奨励、学生等への学費支給の金品に限り非課税(相法21の3①四)。





    所得税課税(一時所得時)学術・芸術に関する貢献の表彰、学術研究の奨励、学生への学費支給の金品に限り非課税(所法9①十三、十四)。
    受益者が法人の場合原則として益金算入。受益者が公益法人の場合は非課税(法法7)。
    委託者死亡時
    公益信託の委託者は、相続税法上、特定委託者とみなされ、信託財産は被相続人である委託者の相続財産を構成する。委託者の相続人に相続税課税(相法附則24、相法9の2⑤)信託財産は委託者を被相続人とする相続財産に含まれるが、相続税価額は零とされる(相基通9-2-6)。

    (参考文献:藤谷武史「公益信託と税制」第37回信託法学会総会(2012年6月10日)報告書記載の表の一部を基に一部変更して作成)

    図表Ⅰ-16 委託者が個人の場合の公益信託課税関係図

    委託者が個人の場合の公益信託課税関係図
    委託者が個人の場合の公益信託課税関係図

    委託者死亡:相続税法は公益信託の委託者を特定委託者とみなす規定を置いている(相法付則24)。公益信託のうち、委託者に残余財産が帰属しない等一定の要件を満たすものを特定公益信託という(所法79③、所令217の2)。特定公益信託の委託者は、残余財産を取得しないので、信託から利益を受けることはなく、信託をコントロールする権限を有するにすぎない。このため、特定公益信託の受託者の地位が移動した場合には、当該信託に関する権利の価額は零として取り扱うこととされている(相基通9の2-6、9の4-2)。

    図表Ⅰ-17 委託者が法人の場合の公益信託課税関係図

    委託者が法人の場合の公益信託課税関係図
    委託者が法人の場合の公益信託課税関係図
  • 高度の公益事業のみを専念して行う個人及び高度の公益事業のみを目的事業として行う人格なき社団・財団に対する贈与に係る非課税財産規定

    高度の公益事業のみを専念して行う個人及び高度の公益事業のみを目的事業として行う人格なき社団・財団に対する贈与に係る非課税財産規定

    POINT

    公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業(以下、「高度の公益事業」という。)のみを専念して行う個人及び高度の公益事業のみを目的事業として行う代表者又は管理者の定めのある人格なき社団・財団(以下「社団等」という。)が個人から贈与により取得した財産で公益を目的とする事業の用に供することが確実なものは非課税財産とされ贈与税は課税されない(相法21の3)。

    ただし、贈与財産が贈与税の非課税財産となるためには、事業者が個人の場合には、受贈者、その親族、特別関係者に対し高度の公益事業から特別利益を与えるようなことがない場合に限られ、事業者が社団等の場合には、社団等が一族支配されていないこと及び社団等が営む高度の公益事業から役員や贈与者の親族・特別関係者が特別の利益を得ていない場合に限られる(相法21の3①三、相令4の5)。

    また、受贈者が贈与を受けた日から二年を経過した日において受贈財産を高度の公益事業のように供していないときは非課税財産とはならない(相法21の3②)。

    個人が公益事業に賛同し、公益事業を行う者に贈与(寄付)を行ったときに受贈者に贈与税を課税すると、寄付の効果が薄くなり、民間人による公益事業の保護育成を阻害することとなる。公益事業とは不特定多数の者の利益に寄与する事業をいうが、不特定多数の者の利益に寄与するといっても、その内容(公益性・公共性)は千差万別である。相続税法は、宗教、慈善、学術その他高度の公益を目的とする事業を行う者で、事業の種類、規模及び運営からみて公益の増進に寄与することが著しいと認められる事業を行う者が贈与により取得した財産で、その高度の公益を目的とする事業の用に供することが確実なものは、贈与税の課税価格に算入しないこととしている。単に公益事業というだけでは、非課税要件を充足しない場合があるので注意が必要である(相法21の3①三、相令4の5、相令2、昭和39年6月9日付 直審(資)24、直資77:贈与税の非課税財産《公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分》及び持分の定めのない法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて)。

    公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業につき、相続税法は、「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業」とだけ規定し、事業の種類等を特に規定していないが(相法21①三、相令4の5、相令2)、国税庁は、後述するように、通達で①事業の種類、②事業の規模、③事業の運営の三要件を具体的に明らかにしている。

    事業主体として、公益の増進に寄与する事業を行う者とは、公益事業のみを専念して行うものであるが、事業施設の利用、余裕金の運用など事業運営に関連し、関係者に対し特別の利益を与えているような場合は、高度の公益事業に専念している場合でも、事業が私的に利用されている面も認められるため非課税財産として扱われない(相令4の5、相令2)。

    また、社団等は、組織体であることに鑑み、組織体が一族支配されている場合や特定の者に特別の利益を与えている場合には、社団等が高度の公益事業を行っているといっても、事業が私的に利用されている面も認められるため非課税財産とはならないとされている(相令4の5)。

    公益を目的とする事業を行う者とは、財産を取得したときを基準に判定するが、財産取得の時においては該当する高度の公益事業を行っていない者でも、財産取得の日の属する年の末日までに取得財産を高度の公益事業の用に供することにより本条所定の公益事業を行うこととなった場合には適用が可能である。

    贈与を受けた財産は、公益を目的とする事業の用に供することが確実なものでなければならず、贈与を受けた日から二年を経過した日において高度の公益事業の用に供していなければ非課税財産とはならない。本規定につき、法令解釈通達は厳格解釈の立場に立ち、贈与を受けた財産を一度でも公益事業の用途以外に供した事実があるときは、その後公益事業の用に供したとしても本規定の適用はないことと解している。

    本規定の対象となる者は、贈与税の納税義務者である自然人又は社団等に限られる。持分の定めのない法人は、贈与者の親族その他特別関係者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少する結果となる場合に限り、贈与税の納税義務者となるが、公益事業を行う持分の定めのない法人が贈与税の納税義務者となるときは、同時に本規定の除外規定に抵触するので、受贈財産が非課税財産となることはない。

    公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業とは

    公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業とは、公益を目的とする事業のうち、事業の種類、規模及び運営がそれぞれ次のイからハまでに該当すると認められる事業をいう。

    イ 事業の種類

    (イ)公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)2条4号《定義》に規定する公益目的事業

    (ロ)社会福祉法(昭和26年法律第45号)2条2項各号及び3項各号《定義》に掲げる企業

    (ハ)更生保護事業法(平成7年法律第86号)2条1項《定義》に掲げる更生保護事業

    (ニ)学校教育法(昭和22年法律第26号)1条《学校の範囲》に規定する学校を設置運営する事業

    (ホ)育英事業

    (ヘ)科学技術に関する知識の普及又は学術の研究に関する事業

    (ト)図書館若しくは博物館又はこれらに類する施設を設置運営する事業

    (チ)宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業

    (リ)保健衛生に関する知識の普及その他公衆衛生に寄与することとなる事業

    (ヌ)政治資金規正法(昭和23年法律第194号)3条《定義等》に規定する目的のために政党、政治団体の行う事業

    (ル)公園その他公衆の利用に供される施設を設置運営する事業

    (ヲ)(イ)から(ル)までに掲げる事業を直接助成する事業

    ロ 事業の規模

    事業の内容に応じ、その事業を営む地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有しており、かつ、その事業を行うために必要な施設その他の財産を有していること。

    ハ 事業の運営

    (イ)事業の遂行により与えられる公益が、それを必要とする者の現在又は将来における勤務先、職業等により制限されることなく、公益を必要とするすべての者(やむを得ない場合においてはこれらの者から公平に選出された者)に与えられるなど公益の分配が適正に行われること。

    (ロ)公益の対価は、原則として無料(事業の維持運営についてやむを得ない事情があって対価を徴収する場合においても、その対価は事業の与える公益に比し社会一般の通念に照らし著しく低廉)であること。

    専ら公益の増進に寄与するところが著しい事業を行う者

    個人の場合

    専ら公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行う者とは、その者が個人である場合には公益の増進に寄与するところが著しいと認められる公益事業のみを専念して行う者をいうものとして取り扱う(昭55直資2-182改正)(相令2(相令4の5において準用))。

    なお、公益事業を行う者が次の者に対しその事業に係る施設の利用、余裕金の運用その他その事業に関し特別の利益を与えるような場合は、公益事業を行っているといっても、その事業を私的に利用している面も認められるため非課税財産として扱わない旨定められている(相令4の5、相令2ただし書き)。

    1. その者若しくはその親族その他その者と特別の関係がある者
    2. その者に当該財産の贈与をした者、その者又はその財産の贈与をした者
    3. これらの者の親族
    4. これらの者と特別の関係がある者

    これらの者と特別の関係がある者とは、①内縁関係にある者及びその者の親族で生計を一にしている者、②使用人及び使用人以外の者で当該個人から生計をみてもらっている者並びにそれらの親族で生計を一にしている者をいう(相令31)。

    特別の利益を与えることとは、次のような場合をいう。

    1. これらの者が役務を提供し、又はこれらの者の財産を公益事業に提供している等の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭その他の財産の支給を受けていること。
    2. これらの者が高度の公益事業にかかる余裕金を生活資金に利用し、又はその施設を居住の用に供している等これらの財産を無償又は有償で利用していること。
    3. これらの者が利息の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭の貸付を受けていること。
    4. これらの者が対価の有無に関係なく、高度の公益事業に係る資産を譲り受けていること。

    公益事業を行う者が社団等である場合

    公益事業を行う者で財産の寄贈を受け、贈与税の納税義務者となる者は個人に限られない。社団等が贈与を受けた場合は、相続税法では個人とみなされ贈与税の納税義務を負う(相法66)。これらの社団等が受贈者となるときは(贈与を受けた財産が非課税財産となるためには)公益の増進に寄与するところが著しいと認められる公益事業(高度の公益事業)のみをその目的事業として行う社団等でなければならない(相法21の3①三、昭396直審(資)24「3」)。

    受贈者である社団等が次のとおり一族支配されていたり、施設の利用、余裕金の運用など事業運営に関連し、関係者に対し特別の利益をを与えているような場合は、社団等が高度の公益事業を行っているといっても、事業が私的に利用されている面も認められるため非課税財産として扱わない旨定められている(相令4の5,相令2ただし書き)。

    (イ)当該社団等の役員その他の機関の構成、その選任方法その他その人格のない社団等の事業の運営の基礎となる重要事項(注1)について、その事業の運営が特定の者又はその親族その他その特定の者と特別の関係がある者の意思に従ってなされていると認められる事実があること(注2)

    (注1)事業の運営の基礎となる重要事項とは、役員その他の機関の構成、その選任方法の他、次に掲げる事項がこれに該当するものとして取り扱われている(昭55直資2-182改正)。

    1. 当該事業の遂行により与えられる公益を受ける者の選任、与えられる公益の種類及びその程度の決定
    2. 事業の運営に関する諸規則の制定
    3. 事業計画及び予算の決定並びに決算の承認
    4. 事業の廃止又は縮小
    5. 4により不要となった財産の処分

    (注2)特別の関係がある者の意志に従ってなされていると認められる事実があることとは、社団等の運営の基本となる規約等に次の1から4までの事項が定められていないこと又は社団等の事績に5から7までの事実がみとめられることをいうものとして取り扱うとされている(昭55直資2-182改正)。

    1. 特定の者及びその者と特別の関係がある者が社団等の構成員又は役員その他の機関の地位にある者の総数の3分の1以下であること。
    2. 社団等の機関の地位にある者の選任は、社団等の代表者の指名又は委嘱によるなど恣意的に選任されることなく、たとえば、社団等の総会若しくは更正に選任されている評議員会の選挙により選出されるなど、その行う事業の種類に応じ、機関の地位にあることが適当と認められる者がその地位に選任されること。
    3. 事業の種類に応じ相当数の評議員、運営委員又はこれらの者に準ずるもの(以下(注2)において「評議員等」という。)を置くこと。
    4. (注1)に掲げる重要事項の決定又は変更は、評議員等の意見を聞き、役員の全部又は大部分の賛成を得てされること。
    5. 公益が主として特定の者及びその者と特別の関係がある者に与えられること。
    6. 高度の公益事業のために支出される費用の額が社団等の収入からみて過小であるなど社団等の経理がその事業の目的に照らして適正でないこと。
    7. 社団等の運営がその規約等に違反して行われたこと。

    (ロ)次に掲げる者に対して当該社団等の事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属その他その事業に関し特別の利益を与えること(注3)

    1. 当該社団等の機関の地位にある者
    2. 当該地位にある者又は当該財産の贈与をした者の親族
    3. これらの者と特別の関係がある者

    これらの者と特別の関係がある者とは、①内縁関係にある者及びその者の親族で生計を一にしている者、②使用人及び使用人以外の者で当該個人から生計をみてもらっている者並びにそれらの親族で生計を一にしている者をいう(相令31)。

    (注3)社団等が特別の利益を与えることは、社団等の機関の地位にある者、贈与をした者又はこれらの者と特別の関係がある者について、たとえば、次に掲げる事実がある場合又はその事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱われている(昭55直資2-182改正)。

    1. 当該社団等の施設その他の財産を居住、担保、生活資金その他私的の用に利用していること。
    2. 当該社団等の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
    3. 当該社団等が解散した場合に残余財産がこれらの者に帰属することになっていること。
    4. 当該社団等の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付けをしていること。
    5. 当該社団等の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い対価で譲渡していること。
    6. これらの者が過大な給与の支給を受け、又は当該社団等の機関の地位にあることのみに基づき報酬を受けていること。
    7. これらの者の債務が社団等によって保証、弁済、免除又は引受けされていること。
    8. 当該社団等の事業の廃止等により、不要に帰する財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
    9. 当該社団等がこれらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃貸料で借り受けていること。
    10. 当該社団等がこれらの者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けていること、又はこれらの者から公益を目的とする事業の用に供するとは認められない財産を取得していること。
    11. 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な法法によらないで、これらのものが行う物品の販売、工事請負、役務提供、物品の賃借その他事業に係る契約の相手方となっていること。
    12. 事業の遂行により供与する公益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与えていること。

    高度の公益事業を行う代表者又は管理人の定めのある人格なき社団・財団が贈与により資得した財産の範囲

    贈与により取得した財産は、原則として贈与により取得した財産そのものをいうのであるが、高度の公益事業を行う者が社団等である場合には、次に掲げる財産は、これに該当するものとして取り扱われる。

    1. 贈与により取得した財産を譲渡して得た譲渡代金の全部又は当該譲渡代金及び譲渡代金により取得した財産の全部を当該事業の用に供することが確実である場合における当該財産
    2. 贈与により取得した財産との交換により取得した財産(交換差金を取得した場合には交換差金の全部を含む。)を当該事業の用に供することが確実である場合の当該財産
    3. 贈与により取得した財産の果実の全部を当該事業の用に供することが確実な場合における当該財産

    贈与により取得した財産を高度の公益事業の用に供することが確実であることとは

    贈与により資得した財産は、公益を目的とする事業の用に供することが確実なものでなければならない。事業の用に供することが確実であるかどうかは、次により判断することとして取り扱われている。

    1. 調査時において、贈与により取得した財産が高度の公益事業の用に供されている場合には、その時までに当該事業以外の用に供されたことがなく、かつ、最初に当該事業の用に供した日から調査時まで引き続き当該事業の用に供されていること。
    2. 調査時において、贈与により取得した財産が高度の公益事業の用に供されていない場合には、事業計画等から判断して財産取得の日から二年を経過した日までに当該事業の用に供されることが確実と認められること。

    二年を経過した日においてなおその事業の用に供していない場合とは

    高度の公益事業を行う者が受贈した財産を取得から二年経過した日においてなおその事業の用に供していない場合には非課税財産とならない。二年を経過した日において公益を目的とする事業の用に供していない場合とは、財産取得の日から二年を経過した日において、贈与により取得した財産を高度の公益事業の用に供していない場合のほか次のいずれかの事実があると認められる場合をいう(昭55直資2-182改正)。

    1. 財産取得の日から二年を経過した日までに、贈与により取得した財産の全部又は一部を高度の公益事業以外のように供した事実があること。
    2. 贈与により取得した財産を最初に高度の公益事業の用に供した日から二年を経過した日まで引き続きその事業の用に供している事実がないこと。
    3. 二年を経過した日以後も事業計画等によって贈与により取得した財産の全部を高度の公益事業の用に供すると認められないこと。

    図表Ⅰ-14 公益事業用資産の贈与税に係る非課税規定

    公益事業用資産の贈与税に係る非課税規定
    公益事業用資産の贈与税に係る非課税規定
  • 離婚に伴い養育料を一括で支払う場合の取扱い

    離婚に伴い養育料を一括で支払う場合の取扱い

    POINT

    養育費とは、子どもを育てていくために日常的に必要な費用(食事、被服費、教育費等)のことをいう。親の離婚に伴う養育費の請求は、未成年者が同居しない親に対して持つ扶養請求と捉えることができる。養育費は日常的に負担する費用であるので、養育費の総額を一括払いした場合、原則として贈与課税の対象となる。課税を避けるためには、一括受給された養育費を金銭信託し、毎月一定額の均等給付を受ける法法がある。

    子の養育費は毎月支払うのが原則だが、養育費の支払いは、通常、長期間にわたるため、確実な毎月の履行確保が難しいのでまとめて支払いを受ける必要が生ずることがある。他方、一括受領した養育料を監護養育者によって、他の用途に消費されることを防ぎ毎月の履行を確保できるよう金銭信託契約を締結して毎月一定額の均等給付を行い、他方が一方的に解約できないようにしなければならないケースも存する。

    このため、養育費の総額を信託する方法がとられることがあるが、次の場合には、その養育料の金額が、その支払いを受ける子の年齢その他一切の事情を考慮して相当な範囲内のものである限り、贈与税は課税されない(昭和57年6月30日直審5-4「離婚に伴い養育料が一括して支払われる場合の贈与税の取扱いについて」)。

    1. 養育料の支払義務者が養育費支払い年数分の金銭を子ども名義の普通預金に支払い、子どもが委託者兼受益者となり、支払義務者を契約解除同意者とした金銭信託契約を信託銀行と締結し運用する。
    2. 支払義務者が委託者兼信託契約解除同意者となり受益者を子どもとし、養育費総額を信託し、受託者である信託銀行が運用する。

    本通達は相続税法21条の3第1項2号の非課税要件である扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるために贈与により取得した財産のうち「通常必要と認められるもの」の適用事例を示したものといえる。