相続税及び贈与税の納税義務の範囲

(平成30年4月1日~)

平成30年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される平成30年度改正の内容(改正法附則43①~③)。

平成30年度改正の内容

今般の改正においては、課税逃れ防止の必要十分な措置を確保しつつ高度外国人材等の受入と長期間の滞在をさらに促進する観点から、外国人が出国後に行った相続又は贈与(一定の場合に限ります。)について、国外財産には課税しないこととされました。

(1)相続税の納税義務

非居住被相続人の要件のうち、「相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である」という要件が撤廃されました。したがって、改正後の非居住被相続人とは、次に掲げる者をいいます。

  1. 相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人
  2. 相続開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの

これにより、外国に住所を有する外国人が、外国に住所を有する外国人である被相続人から相続又は遺贈により取得する日本国外にある財産については、被相続人の日本国内に住所を有していた期間にかかわらず、相続税は課税されなくなりました(相法1の3③三)。

(2)贈与税の納税義務

贈与税の納税義務については、相続税の場合と異なり、贈与者が生存していることから、一時的に外国に住所を移すことによって、日本の贈与税の課税を免れるといったことも想定されます。そこで、非居住贈与者の要件については、非居住被相続人とは異なり、次のように改められました。すなわち、贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者であって次に掲げるものをいいます。

  1. 贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人であって次に掲げるもの
    1. 日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの
    2. 日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計10年を超えるもののうち同日から2年を経過しているもの
  2. 贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの

(3)日本国外に居住する外国人が短期非居住贈与者から財産の贈与を受けた場合の贈与者の申告

日本国外に居住する外国人が短期非居住贈与者から贈与により財産を取得した場合には、仮に他の贈与(その短期非居住贈与者からの他の贈与のほか、それ以外の者からの贈与を含みます。)により日本国内にある財産を取得していたときであっても贈与税の申告の必要はありません(相法28⑤)。

ただし、その短期非居住贈与者が日本国内に住所を有しなくなった日から2年を経過する日までに再入国した場合には、その再入国した日の属する年の翌年3月15日までに贈与により取得した全ての財産に係る贈与税の申告をしなければなりません(この場合には、その贈与を受けた年分で贈与税の申告をすることになります。)(相法28⑥)。

また、その短期非居住贈与者が日本国内に住所を有しなくなった日から2年を経過した場合(再入国しなかった場合)において、贈与により日本国内にある財産を取得していたときは、その2年を経過した日の属する年の翌年3月15日までにその」財産に係る贈与税の申告をしなければなりません(相法28⑦)。

(注)「短期非居住贈与者」とは、贈与の時において日本国内に住所を有していなかった贈与者であって、贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもののうち日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年を超えるもので、同日から2年を経過していない外国人をいいます。

納税義務者の判定(特定納税義務者を除く)

課税時期:平成30年4月1日~(改正法附則43①~③)

納税義務者の判定(特定納税義務者を除く)

(注)特定納税義務者は、居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、居住制限納税義務者及び非居住制限納税義務者のいずれにも該当しない者をいうので、この表に含まれていない。

  1. 出入国管理及び難民認定法別表第1の在留資格で滞在している者で、相続・贈与前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者
  2. 出国前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の外国人
  3. 出国前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年超の外国人で出国後2年を経過した者

平成29年度税制改正の概要

平成29年度税制改正において、相続税及び贈与税の租税回避を防止しつつ、日本で一時的に就労しようとする外国人の受入を促進する観点から、日本人については非居住者の納税義務の範囲を厳格化し、外国に一定期間住所を移すことによる相続税及び贈与税の租税回避を抑制する一方、日本に短期間居住する外国人の納税義務を緩和するといった大幅な見直しがなされ、相続税の納税義務者の区分とその納税義務の範囲が次のとおり改正されました(旧相法1の3①)。

(1)居住無制限納税義務者

相続又は遺贈により取得した財産の全てについて納税義務を負う次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有するものをいいます。

  1. 一時居住者でない個人
  2. 一時居住者である個人(被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)

(2)非居住無制限納税義務者

相続又は遺贈により取得した財産の全てについて納税義務を負う次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有しないものをいいます。

  1. 日本国籍を有する個人であって次に掲げるもの
    1. 相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもの
    2. 相続開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの
      (被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)
  2. 日本国籍を有しない個人(被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)

(3)居住制限納税義務者

相続又は遺贈により取得した財産のうち日本国内にある財産のみに対して納税義務を負う者で、上記(1)の者以外の相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有するものをいいます。

(4)非居住制限納税義務者

相続又は遺贈により取得した財産のうち日本国内にある財産のみに対して納税義務を負う者で、上記(2)の者以外の相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有しないものをいいます。

(5)特定納税義務者

被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった者のうち、相続税法第21条の16第1項の規定により相続時精算課税の適用を受ける財産をその被相続人から相続又は遺贈により取得した取得したものとみなされるものをいいます。

(注1)上記(1)及び(2)の「一時居住者」、「一時居住被相続人」及び「非居住被相続人」の意義は、以下のとおりです(旧相法1の3③)。

  1. 一時居住者とは、相続開始の時において在留資格を有する者であって相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいいます。
  2. 一時居住被相続人とは、相続開始の時において在留資格を有し、かつ、日本国内に住所を有していた被相続人であって相続開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいいます。
  3. 非居住被相続人とは、相続開始の時において日本国内に住所を有していなかった被相続人であって次に掲げる者をいいます。
    1. 相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの
    2. 相続開始前10年以内のいずれかの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの

(注2)上記(5)を除き、贈与税の納税義務者に関しても相続税の納税義務と同様となっていました(旧相法1の4①③)。

課税逃れを防ぐ観点から、日本に長時間(10年超)滞在した外国人が、出国後5年以内に行った相続又は贈与については、国外財産にも相続税・贈与税を課税することとされました。これについては、例えば引退後に母国に戻った外国人が死亡したような場合にまで、日本国外にある財産についても日本の相続税が課税されるのは酷であるとの指摘もありました。

平成30年度税制改正前の納税義務者と課税財産の範囲
平成30年度税制改正前の納税義務者と課税財産の範囲

(注)特定納税義務者は、居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、居住制限納税義務者及び非居住制限納税義務者のいずれにも該当しない者をいうので、この表に含まれていない。

  1. 出入国管理及び難民認定法別表第1の在留資格で滞在している者で、相続・贈与前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者
  2. 出国前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の外国人
  3. 出国前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年超の外国人で出国後2年を経過した者


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