贈与税の3年内加算が適用されない特定贈与財産とは

POINT

1.特定贈与財産とは、婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者が被相続人から贈与により取得した居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭で次のものをいう。

  1. 相続開始の年の前年以前に贈与が行われている場合で、被相続人の配偶者が贈与税の配偶者控除(相法21の6①)の適用を受けているときは、配偶者控除を受けた金額(最高2,000万円)に相当する部分
  2. 相続開始の年に行われた贈与である場合は、過去に被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けたことがない配偶者が、被相続人から贈与を受けた居住用不動産又は金銭のうち、贈与税の配偶者控除の特例があるものとした場合に控除されることとなる金額(最高2,000万円)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分

2.特定贈与財産は3年以内加算の規定(相法21の2④)が適用されない。

相続税の申告にあたり、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産がある場合は、贈与により取得した財産のうち贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除く。)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす。また、相続税の課税価格に加算された贈与財産に対し課税された贈与税額を相続税額から控除する。控除すべき贈与税額が相続税額を上回ることがあっても、納付すべき相続税額が零となるだけで控除不足の贈与税は還付されない(相法19①)。

ここでいう特定贈与財産とは、婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者が被相続人から贈与により取得した居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭で次のものをいう(相法19②)。

イ 相続開始の年の前年以前に贈与が行われている場合で、被相続人の配偶者が贈与を受けた日の年分の贈与税につき贈与税の配偶者控除(相法21の6①)の適用を受けているときは、配偶者控除を受けた金額(最高2,000万円)に相当する部分(相法19②一)。

ロ 相続開始の年に行われた贈与である場合は、贈与時に被相続人との婚姻期間が20年以上である被相続人の配偶者(すでに被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けたことがないものに限る。)が、相続開始の年において、被相続人から贈与を受けた居住用不動産又は金銭のうち、贈与税の配偶者控除の特例があるものとした場合に控除されることとなる金額(2,000万円が限度となる。)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分。

相続開始の年の前年に、評価額2,500万円の自宅の敷地を被相続人が配偶者に贈与し、贈与税の配偶者控除(相法21の6)2,000万円と基礎控除110万円を控除し、贈与税の課税価格390万円に対する贈与税53万円を納税していたケースでは、特定贈与財産2,000万円を除く500万円を相続税の課税価格に加算して申告することとなる。

同様の事例で、贈与税の配偶者控除の適用がある贈与が行われた同年に相続が開始したときは、贈与税の配偶者控除の申告を行う前に相続が開始してしまったのであるが、贈与税の配偶者控除の適用があるものとして控除されることとなる金額(2,000万円が限度となる。)に相当する部分として、相続税の申告書において選択する部分(上記のケースでは2,000万円)が特定贈与財産となる。この結果、500万円だけが相続税の課税価格に加算される。この場合、贈与を受けた配偶者は、贈与を受けた年(同時に相続が開始した年でもある)の翌年3月15日まで、当該自宅に居住を継続することが必要である。なお、選択した2,000万円は3年内加算の規定(相法21の2④)が適用されないので、相続税の申告後、贈与税の配偶者控除の適用をしないこととなった場合でも贈与税の申告が必要である(相基通19-9)。

図表Ⅰ-22 要添付書類

相続開始の年に受けた特定贈与財産がある場合戸籍の付票の写し
(被相続人からの贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたものに限る。)
居住用不動産の登記事項証明書
(居住用不動産の贈与を受けている場合)