包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することから(民法990)、被相続人の積極財産だけでなく消極財産たる債務も承継する。承継した債務は相続税の申告において債務として控除される。包括受遺者が被相続人の親族でなくとも、相続人と同一の権利義務を有するから負担した葬式費用を相続税の申告において控除することができる(相法13)。包括受遺者は準確定申告の共同提出義務を負い、遺贈者の納税義務を承継する。相続人や包括受遺者が複数いる場合には、それぞれの者が承継する国税の額は、民法900条から902条までの規定(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)による相続分により按分して計算した額によるものとされている。その者の負担すべき国税の額が相続によって得た財産の額を超えるときは、その相続人(包括受遺者を含む。)はその額を限度とし、他の相続人がその納付義務を負うものと規定されている(通法5②③)。
(注)これに対し相続税の課税価格は、民法900条から903条(特別受益)による相続分により計算する。三年内加算の対象となる相続開始前の贈与は特別受益にあたるからである。
包括受遺者が相続人でなければ(1)、次の規定は適用されない。
(1)「相続人に対する包括遺贈=相続分の指定」だと解する説では、包括遺贈(たとえば、配偶者と子供三人が相続人であるとき、法定相続分は6分の1の長男に対し遺産の3分の1を遺贈するというような割合的遺贈)は常に相続分の指定(6分の1の法定相続分を3分の1に変更する指定)となる。この説に立てば、相続人は包括受遺者になることはない。
- 基礎控除の計算上加算される相続人数(相法15)
ただし、基礎控除3,000万円の適用はある。遺産を承継するのは包括受遺者だけで、相続人はゼロの場合でも、基礎控除は3,000万円となる(相基通15-1)。 - 生命保険金等及び退職手当金等に係る非課税金額(相法15①五、六、相基通12-8、12-10)。これらの規定は、財産をし取得したものが相続人であることが非課税規定の適用条件であるからである。
- 相次相続控除(相法20、相基通20-1)。これも財産を取得したものが相続人であることが適用要件になっているからである。
なお、受遺者が遺贈者の一親等の親族及び配偶者以外の者であれば、相続税の2割加算の対象となる(相法18)。