遺言による換価分割

遺言による換価分割(清算型遺贈)は、遺産を換価し、その対価として得られる金銭を共同相続人間(包括受遺者を含む。)に分配することを指示した遺産分割方法の指定である。

遺言執行者がある場合は、遺言執行者が相続財産の一部又は全部を換価して相続人や受遺者に分配することとなる。

換価分割において、遺言の文言から「換価して分配するように指定された遺産を相続又は遺贈により取得する者が確定できる」ならば、当該相続人又は受遺者が譲渡者である。

しかしながら、換価対象財産を誰に相続させるのか(分割方法の指定)、遺贈するのか(特定遺贈)が明確に記載されていない遺言が少なくない。

この場合は、遺言者の意思を推定することになるが、考え方はおおむね次のとおりである。

  1. 相続人以外の受遺者が包括受遺者である場合
    包括受遺者を含めた相続人が分配される金額に応じた比率で遺産を取得し譲渡したものと判断する。遺言の内容は、相続分の指定、分割方法の指定及び包括遺贈の意思表示と読むことができるからである。
  2. 相続人以外の受遺者が特定受遺者である場合
    遺言で特定の財産を受遺者が取得した後に換価するというように明確に記載されていない場合は、相続人が当該財産を取得し、譲渡した代金の一部又は全部を特定受遺者に交付すると考える。特定受遺者は金銭を遺贈されたと考えるのである。このように考えると特定の財産の譲渡者は相続人と判断することになる。

図表Ⅱ-32 遺言による課税形態一覧表

遺言の内容遺贈資産に係る譲渡所得の納税義務者相続税に関する影響
遺言による換価分割相続人・包括受遺者換価資産の相続税評価額と時価との差を調整する
法人に対する遺贈被相続人(準確定申告)未払所得税は相続債務となる
個人に対する遺贈課税されない受遺者は相続税の納税義務者となる