一般的な相続税コンサルティングで注意すること

市販の書籍に記載されている相続税の節税ノウハウの疑問点、問題点

市販の相続税節税マニュアルと、それらの書籍を下書きにした提案を受ける場合の注意は次のとおりです。

相続税の全額を支払うだけの生命保険に入りましょう

試算した相続税の全額を支払うほどの生命保険に入る必要はありません。

満期返戻金のある生命保険を中途解約すると元本割れの可能性があります。
低金利で資金が長期に寝てしまうデメリットもあります。
多額のお金を長期低金利に固定して運用するつもりならば良いかもしれませんが、相続税の節税という観点から考えると、非課税の枠(500万円×相続人数)で加入すれば十分です。

節税効果が非課税枠に限定されるのに、なぜそのような提案を受けるのでしょうか

理由は二つ有り、一つは遺産を分割する手間が省けるというメリットがある、もう一つは提案する方の都合。

遺産を分割する手間が省けるというのは、死亡保険は指定された受取人が手続きを行うと、相続開始後2週間ほどで支払われるからです。死亡保険は受取人が単独で手続きできます。
被相続人名義の預金を降ろすには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明、銀行指定の書類にサインが必要です。預金は相続人全員の協力が必要です。

提案する方の都合というのは、税理士が保険会社から保険販売手数料を得るためです。

非課税枠は500万円×相続人数

あるドクターが所得税の顧問税理士に相続税対策を依頼したところ、3億円の保険に入ることを勧められました。
気の良いドクターが勧められるままに保険契約をしたところ「これで安心です。いざという時には奥様やお子様はこの保険で相続税を払えます」と胸を張って言われたそうです。
あくまで推定ですが、その税理士は、保険を売って4%の販売手数料を手にしたのです。
現金や預金で1,500万円残すと丸々税金の対象です。税率が30%なら450万円が、40%なら600万円が税金です。妻と子ども2人、合計3人の相続人がいる人が、生前に預金1,500万円を生命保険に変えれば、1,500万円に税金はかからなくなります。生命保険の非課税枠を超えると超えた部分は税金の対象です。

例:相続人が3人なら1,500万円まで非課税です。
500万円×3=1,500万円

それ以上の節税効果はありません。
それ故、多額の生命保険契約を勧める人は、「相続税対策」ではなく「相続対策」だと言うのですが、多額の生命保険契約を行うと、保険金を受け取る人とそうでない人に差が生じてしまいます。(生命保険は、原則として民法上の遺産ではないため、遺留分の計算が変わってしまうのです。)

財産の運用という面から見ると、生命保険契約は原則として現在の低金利で長期の定期預金をするのと同一の効果を生んでしまいます。中途解約をすると元本割れを起こす、金利0.1%で10年の定期預金を行なうのと同じような運用を選択しているのです。

生前にたくさん贈与してしまいましょう

限界税率を意識した贈与は効果的です。(あげたことにするのではなく、本当にあげればの話ですが)

平成27年の税制改正で「20歳以上の子や孫に対する300万円を超える贈与税の税率」は、他の人に対する贈与税の税率より低くなっています。
本来、贈与税の税率は高く設定されていて、多額の財産を贈与すると相続税よりも多めの税金を負担するようになっています。相続税が課税されるべき財産が生前に散逸するのを防ぐ目的で相続税より高率の贈与税が用意されていたのですが、政府は、景気刺激のために平成27年に方針を転換しました。次世代への財産の早期移転を促し、相続財産が生前に若い世代に移転するのを促進しようとしているのです。

なお、令和6年1月1日の相続開始分から贈与税の相続加算期間が3年から7年に延長・拡大されました。
贈与者が元気な内から、計画的に贈与することが必要です。
事前に専門家にご相談ください。

税理士法人日本税務総研は、独自の推定遺産総額と効果的な贈与額の算出シュミレーションプログラムを開発しています。限界税率を意識した贈与ならば、遺産総額3億円、相続人子ども2名なら1人当たり年間1,200万円が最も高率的な節税が可能です。


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