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  • 被相続人が法人に遺贈した場合の課税関係(受遺者法人の態様別課税関係)

    被相続人が法人に遺贈した場合の課税関係(受遺者法人の態様別課税関係)

    被相続人が法人に遺贈した場合の課税関係

    (受遺者法人の態様別課税関係)

    普通法人に遺贈した場合

    普通法人に遺贈した場合
    図表Ⅵ-1 普通法人に遺贈した場合
    1. 普通法人は受贈益に対し法人税を負担する(法法22②)。
    2. 法人は相続税の納税義務者ではないので相続税の課税対象にはならない(相法1の3)。
    3. 普通法人が同族法人の場合、法人に遺贈をしたことにより株式又は出資の価額が増加した場合は、遺贈者から他の株主に対する贈与となる(相法9、相基通9-2)。
    4. 遺贈者は遺贈財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税を課税される(被相続人に課税、準確定申告)(所法59①一)。

    人格なき社団・財団に遺贈した場合

    人格なき社団・財団に遺贈した場合
    図表Ⅵ-2 人格なき社団・財団に遺贈した場合
    1. 代表者又は管理者の定めのある人格なき社団・財団(以下、「人格なき社団・財団」という。)は、個人とみなされ相続税が課税される(相法66①)。
    2. 人格なき社団・財団が公益を目的とする事業等を行っている等所定の要件を満たす場合、相続税は非課税となる(相法21の3①三)。
    3. 相続税が課税される場合は、法人税等の額に相当する額を控除する(相法66⑤)。
    4. 遺贈者は遺贈財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税を課税される(被相続人に課税、準確定申告)(所法59①一)(人格なき社団・財団は法人とみなされている(所法4))。

    持分の定めのない法人に遺贈した場合

    持分の定めのない法人に遺贈した場合
    図表Ⅵ-3 持分の定めのない法人に遺贈した場合
    1. 寄附を受ける法人が34種の収益事業に対してだけ課税される法人の場合、法人税は非課税となる
    2. 寄附を受ける法人が全ての所得に課税される法人である場合は、受贈益は法人税の課税対象となる
    3. 原則、持分の定めのない法人には相続税は課税されないが、遺贈者の親族等の相続税の負担の不当な減少となる場合は持分の定めのない法人を個人とみなして相続税が課税される(相法1の3、66④)。その場合、法人税が課税された場合は、相続税から控除する(相法66⑤)。
      利益を受ける者が親族等でなければ相続税法66条は適用されないので、同法65条により特別の利益を受ける者に相続税が課税される(相法65①)。
    4. 遺贈者は遺贈財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される(被相続人に課税、準確定申告)(所法59①一)。遺贈を受ける法人が公益認定委員会により認定された公益社団法人、公益財団法人等、その他公益を目的とする事業を行う法人である場合には、遺贈の日から2年以内に公益目的事業に供するなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を得たときは、所得税法59条の1項1号の規定については遺贈がなかったものとみなすこととされている(措法40①後段)。承認の却下や取消の際は、遺贈者は遺贈財産を時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税される(措法40②)。承認取消の際、法人が個人とみなされ譲渡所得の所得税課税を受ける場合もある(措法40③)。

    図表Ⅵ-4 持分の定めのない法人の法人税の課税関係

    分類課税形態
    法人税法別表第二掲載法人
    学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、社会医療法人、宗教法人など
    公益社団・財団法人、公益認定委員会により公益認定された一般社団・財団法人
    非営利型法人である一般社団・財団法人
    34種類の収益事業課税
    みなし寄付金特例
    社会医療法人以外の財団である医療法人・持分の定めのない医療法人
    その他の一般社団・財団法人
    全所得課税

    (注)持分の定めのない法人のうち財団である医療法人及び持分の定めのない社団である医療法人は、医療法に基づいて設立される医療法人である。社会医療法人以外の医療法人は、法人税法上、普通法人として取り扱われ原則として全所得課税されるが次の例外がある。
    ・設立時:資本金等の額の増加として扱われる。ただし、相続税法66条4項の規定により贈与税が課税された場合には、贈与税を控除した残額が資本金等の額となる(法法2①十六、22⑤、法令8①十四)。
    ・設立後:法人税課税(法法22②)


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    • 相続税の税額控除・非課税・特例

      相続税の税額控除・非課税・特例

      相続税の税額控除・非課税・特例

      相続税の税額控除

      よく、「配偶者が相続する遺産の額が1億6千万円か法定相続分のうち多い方までの額以下ならば、取得した遺産に相続税が課税されない」という説明を受けると思いますが、その仕組み(税額控除)を正しく理解している人は少ないのです。

      ここで、配偶者の税額軽減特例(税額控除)をはじめ、相続税の納税額を算出するために必要な税額控除の概要をご説明します。

      基礎控除

      法定相続人がいなくても3,000万円の基礎控除は使えます

      相続人が不存在で、亡くなるまで被相続人の身の回りの世話をしていた方が特別縁故者として家裁に認定され、財産分与が行われた場合でも、3,000万円の基礎控除は適用できます。

      基礎控除の計算は次の算式のとおりです。
      3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

      贈与税額控除

      相続又は遺贈で財産を取得した人がポイント

      相続又は遺贈により財産を取得した人は、相続開始前3年以内に行われた贈与について(贈与税の基礎控除以下でも)、相続財産に加算して申告します。その際、過去に行った贈与税の申告で納付済みの贈与税額を相続税額から控除します。(マイナスになっても還付は受けられません。)

      贈与税額控除を使える人

      贈与税額控除を使える人は「相続開始前3年以内に贈与財産を受け取った人」ではありません。「相続または遺贈により財産を取得した人」が開始前3年以内の贈与額を相続財産に加算して計算することに注意してください。

      配偶者の税額軽減額

      勘違いしている人が多いのですが

      配偶者の税額の軽減とは、亡くなられた方の配偶者が遺産分割や遺贈によって取得したことが確定した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額まではかからないように税額控除される制度です。

      1. 1億6千万円
      2. 配偶者の法定相続分相当額
      • 相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
      • 「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して相続税の申告書又は更正の請求書を提出し、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。
      • 相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受け、やむを得ない事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。

      (注)この制度の対象となる財産には、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。

      良くある勘違い

      配偶者と子供一人、合計相続人二人の場合、基礎控除が4,200万円あるから、遺産が2億200万円(1億6,000万円+4,200万円)の場合、配偶者が全遺産を相続すると相続税は0円になるというのは誤りです。

      2億200万円の遺産を二人の相続人が取得すると、相続税の総額(配偶者の税額軽減前の税額)は3,400万円です。2億200万円の遺産の全てを配偶者が相続した場合、税金は0円にはなりません。配偶者の税額軽減額は全課税財産額に占める配偶者の軽減対象財産額(この場合は1億6千万円)の税額割合2,693万円です。
      3,400万円×1億6,000万円/2億200万円=2,693万円
      この金額が軽減される金額です。
      この結果、全財産を取得した配偶者の納付額は707万円です。

      未成年者の税額控除

      無制限納税義務者に限定

      未成年者控除が受けられるのは、居住、非居住に関わらず、相続又は遺贈により財産を取得した無制限納税義務者に該当する未成年者です。

      • 未成年者控除の額は、未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
        (例)未成年者の年齢が13歳7か月の場合は、7か月を切り捨て13歳で計算します。この結果、20歳までの年数は7年になり、未成年者控除額は、10万円×7年で70万円です。
      {“@context”:”https://schema.org”,”@type”:”FAQPage”,”@id”:”https://lp.jtmi.jp/inheritance/deduction-exemption-exception/”,”mainEntity”:[{“@type”:”Question”,”name”:”未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、引き切れない控除額は他の相続人から引けますか?”,”acceptedAnswer”:{“@type”:”Answer”,”text”:”引き切れない部分の金額を未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。<br>(注)扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。 “}}]}

      障害者の税額控除

      無制限納税義務者に限定

      障害者の税額控除を受けられるのは、次の人です。

      • 被相続人の相続人であり(相続放棄をした場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人)、居住、非居住に関わらず、相続又は遺贈により財産を取得した時に無制限納税義務者に該当する障害者(相続開始時点で障害者)である方。
      • 障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年(1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。)につき10万円、特別障害者の場合は1年につき20万円で計算した額です。
      {“@context”:”https://schema.org”,”@type”:”FAQPage”,”@id”:”https://lp.jtmi.jp/inheritance/deduction-exemption-exception/”,”mainEntity”:[{“@type”:”Question”,”name”:”障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないときは引き切れない控除額を他の相続人から控除できますか。 “,”acceptedAnswer”:{“@type”:”Answer”,”text”:”引き切れない部分の金額を障害者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。 “}}]}

      相次相続控除

      適用要件
      1. 被相続人の相続人であること
      2. 相続開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得し相続税を納税していること

      相次相続控除が適用できるのは相続人に限定されています。相続の放棄をしたり相続権を失ったりした人が遺贈や死亡保険の受取人である場合、相次相続控除は適用できません。

      非課税財産

      相続人が受け取った死亡保険金と死亡退職金

      死亡保険金や死亡退職金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

      • 500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
        *相続人以外の人が取得した死亡保険金や死亡退職金には非課税の適用はありません。

      小規模宅地等の課税価格の特例

      特定の親族が取得することが必要

      被相続人の自宅の敷地は、特定の親族が相続又は遺贈により取得すると330㎡まで課税価格が80%減額されます。

      特定の親族とは次のとおりです。

      1. 配偶者
        配偶者はオールマイティです。被相続人と不仲になり別居していた配偶者でも特例の適用は可能です。居住要件や所有継続要件もありません。
      2. 同居の親族
        自宅の小規模宅地の特例の特徴は、適用対象者が被相続人の「同居の親族」であれば足りる点です。親族ですから相続人に限りません。ただ、相続人以外の親族が取得するためには遺言が必要です。法定申告期限まで同居していた家に住み続けることと同じく法定申告期限までに所有を継続することが必要です。
      3. 家なき子
        配偶者や同居の法定相続人(この場合は法定相続人です。)がいない場合に初めて適用対象者として登場できます。被相続人の親族で、相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有している家に住んでいなかった人です。いいかえれば居住している家が借家である人です。法定相続人以外の親族は遺言があることが必要です。
      自宅の小規模宅地特例の注意点と例外

      自宅の相続税評価額が5,000万円だった場合、配偶者がこれを相続し、小規模宅地の特例を適用すると課税価格は1,000万円ですみます。(▲80%減額)よく評価額が下がるという表現をする人がいますが、誤りです。配偶者や同居の親族が取得したからといって敷地の評価額が下がることはありません。相続税の税率をかける「課税価格」を80%減額するのです。

      自宅の小規模宅地の特例の対象となる土地は、被相続人が相続開始直前に自宅として使用していた家の敷地です。被相続人が数年前に老人ホームに移転している場合は、次の二つの要件を備えると適用可能です。

      1. 被相続人が要介護の状態になって老人ホームで亡くなったこと
      2. 空き家になった自宅に他の人(以前から同居していた人を除く)が住んだり、人に貸したり、事業用に転用したりしていないこと

      この場合も、適用対象者は配偶者や同居の親族がいると配偶者や同居の親族が取得しないと適用できません。配偶者か同居の法定相続人がいなければ、家なき子が取得すると適用できます。

      • 被相続人が老人ホームに入っても、従前、同居していた親族が相続開始時点まで住み続けていれば、生計同一の親族の居住用に該当し、80%減額特例の適用要件を充します。

      現行相続税法は、この特例のように誰がどの財産を取得するかにより税額が大幅に変わることがあります。遺産分割協議をまとめる前に、相続登記を行う前にベテランの税理士の意見を聞く機会を設けていただくことが重要です。


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      • え!暦年課税がなくなるの?資産移転の時期の選択に中立な税制の構築等本格化

        え!暦年課税がなくなるの?資産移転の時期の選択に中立な税制の構築等本格化

        贈与税の暦年課税は廃止されるの?
        相続時精算課税に一本化?

        そんなことにはなりません。その理由は?

        令和3年度税制改正

        税制調査会は、昨年末の会合で、本格的に資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築等について検討を始めるとしています(令和2年11月13日中里会長記者会見)。

        ここでいう「中立的な税制」というのは、相続により取得した財産に、生前に行った贈与を長期間にわたり加算して相続税を課税しようとするものです。

        これを受け、暦年贈与制度が廃止され相続時精算課税制度に一本化されると予測する向きも見受けられますが、税制調査会が参考にする米国、イギリス、ドイツ、フランスの税制を見ると、富裕層に不利になる税制改正が行われる可能性は高くありません。

        米国(3億2,820万人)の場合

        相続開始前の贈与の遡及時期の制限はなく、過去すべての贈与が相続財産に加算され相続税が算出されますが、生涯累積控除は1,158万ドル(12億1,590万円:1ドル@105円)あり、年間課税件数は5,000件にすぎません(最高税率は40%、配偶者は免税)。税収は約2.2兆円。

        イギリス(6,800万人)の場合

        個人間の贈与等については贈与時に課税されず、贈与後7年以内に贈与者が死亡すると経過年数に応じ、8~40%の税率で課税され相続税と合算されますが、加算される贈与額と相続財産額の合計から32.5万ポンド(4,680万円:1ポンド144円)の基礎控除があります(配偶者は免税)。税収は約0.7兆円。

        ドイツ(8,300万人)の場合

        相続開始前10年間に贈与された財産が相続財産に加算されますが10年間累積で配偶者は婚姻中における財産増加額の半分は非課税になるほか、50万ユーロ(6,350万円:1ユーロ127円)、子は40万ユーロの(5,080万円)の基礎控除(相続税と共通)があり、贈与税と相続税の標準的な最高税率は30%です。税収は0.7兆円。

        フランス(6,706万人)の場合

        相続開始前15年間に贈与された財産が相続財産に加算されますが配偶者の相続税は免税、子は10万ユーロ(1,270万円)の基礎控除があります。税収は1兆円。

        総じて我が国(1億2,333万人)の相続税収は既に2.1兆円あります。

        何の工夫もなく相続時精算課税制度に一本化すると、「資産移転の時期の選択に中立的な税制」にはなりますが、デフレに弱い相続時精算課税制度を利用する人は限られ、若年層への資産の移転が滞ってしまい、経済の停滞の原因になりかねません。

        いたずらに不安がらず、税制調査会の検討を見守りましょう。


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        • 贈与契約と贈与税の納税義務の成立

          贈与契約と贈与税の納税義務の成立

          POINT

          1. 贈与税の納税義務は、贈与により財産を取得したときに成立する。
          2. 贈与による財産の取得の時
            1. 書面による贈与は、贈与契約の効力が発生した時。
            2. 書面による贈与でも、停止条件付の贈与契約の場合には条件が成就した時。
            3. 書面によらざる贈与契約(口頭契約)は履行の時。

          我が国の民法は、贈与契約を贈与者と受贈者の2つの意思表示によって構成される1つの法律行為として観念し、そこから贈与者に財産権移転義務が発生すると説明する。

          贈与とは

          贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し」、「相手方が受諾をする」ことによって法的拘束力を持つ諾成契約である。

          簡単に言えば「あげますよ。」、「え、いただけるの、ありがとう!」という合意だけで成立する契約である。

          このように目的物の交付などを要せず、当事者の合意だけで成立する契約を諾成契約という

          これに対し、使用貸借など契約の成立に当事者の合意だけでなく、物の引き渡しなど給付を必要とする契約を要物契約という。

          民法550条は、書面によらざる贈与は各当事者が撤回できるとし、ただし書きで「履行の終わった部分については、この限りでない」と規定する。

          この規定の趣旨は、贈与者の意思が客観的に明確になることを待つことで将来の紛争を防止することと、軽率な贈与を防止することにあるといわれる。

          贈与による財産取得の時

          贈与税は贈与による財産の取得を課税原因とする。

          贈与契約が諾成契約であることを考慮すると、贈与税の課税時期である「贈与による財産の取得の時」とは、贈与契約成立の日、すなわち当事者の合意があった時として差し支えないと考えられる。

          国税庁は、書面によるものについてはその契約の効力の発生した時とし、書面によらないものについては履行の時としている。

          書面による贈与であっても、「大学に合格したら100万円をあげる」というような条件が付されている契約ならば、条件が成就するまで、すなわち大学に合格するまで契約の効力は生じない。

          このような「将来発生するかどうか不確実なこと」が条件になっている契約を停止条件付き契約という。

          贈与契約と贈与税の納税義務の成立

          種類民法税法
          書面による贈与撤回できない原則贈与契約の効力の発生した時
          停止条件付条件が成就した時
          書面によらない贈与履行の終わった部分を除き、いつでも撤回可能贈与履行の時

          農地について農地法は、用途転用について規制しているだけでなく、権利移転についても農業委員会の認可(許可や届出の受理)がなければ、私人間の契約だけでは所有権移転の効力が生じないとしている。

          この場合も、私人間の契約は、認可を受けることを条件とする停止条件付き契約となる。

          このような書面による停止条件付きの贈与契約は、条件成就の時が財産の取得の時となる。

          公正証書による贈与と課税時期

          過去に贈与の時期が特に問題とされたのは公正証書による贈与である。

          事案の典型例は次の通りである。

          父Aは、所有不動産甲を子Bに贈与する旨の贈与契約書を公正証書により作成し、贈与税の除斥期間の経過を待って、所有権移転登記を行い、多額の贈与税の課税を免れようとした。

          裁判所は、次の認定事実により課税時期は所有権移転登記の時であるとした。

          1. 本件公正証書は、将来、BがAから甲不動産の所有権移転登記を受けて、税務署長が甲不動産の贈与の事実を把握しても、Bが贈与税を負担しなくてすむようにするために作成されたものであること、すなわち、本件公正証書を作成した目的は、「贈与税の除斥期間の完了を待って、所有権移転登記を行い贈与税の課税を免れるため」であり、他に公正証書を作成する必要が認められないこと。
          2. Aは、公正証書の記載通り公正証書作成日に甲不動産を贈与する意思は認められないこと。
          3. Bもまた、公正証書作成時に甲不動産の贈与を受けたという認識はなかったものと認められること。
          4. そうすると、本件贈与は、書面によらざる贈与となり、贈与により甲不動産を取得したのは、履行の時、すなわち、所有権移転登記の時である。

          登記には公信力がなく、所有権移転(物権変動)は、当事者の意思表示のみにより効力を生ずるから、作成日付が公に確認できる公正証書により贈与契約書を作成し、贈与税の除斥期間(現行法は法定申告期限から6年)の完了を待って所有権移転登記を行うという悪質な事例に対し、裁判所は、脱税の意図を持って作成された公正証書は、当事者の贈与の意思を認定する証拠資料とならないとした事例である。

          本事例は査察事案とはなっていないようであるが、近年の国税犯則取締法の厳罰化の傾向を見ると、今後、このような手口で脱税を図る場合には、刑事事件として立件される可能性もあるということを念頭に置く必要がある。

          なお、立法政策としては、課税の公平性を維持するために、公正証書を登記原因とする贈与の時期は、登記があった日に贈与があったものとみなす規定(除斥期間の特例)を法令化することが望ましい。


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          • 生命保険と相続税、生命保険の非課税枠

            生命保険と相続税、生命保険の非課税枠

            生命保険と相続税の関係

            生命保険などの保険は相続税への対策としてとても有効に使用できます。

            生命保険契約にかかる死亡保険金については「500万円×法定相続人の人数」まで、相続税が非課税となる枠が設けられています。

            それを越えた部分に相続税が課税さるため、この点を意識しておけば将来節税に役立ちます。

            生命保険金の一部には相続税がかからない仕組みになっているため、金銭やその他の財産をそのまま相続人に相続させるより、生命保険金という形で相続人に譲渡した方が、かかる相続税が少なくて済みます。

            死亡保険金は実質的な相続税の基礎控除

            財産をそのまま残しておくよりも、保険金として相続人に渡す方が、現金が相続人の手元に残ります。

            例えば、法定相続人が子供二人の場合、生命保険の非課税枠が500万円×2人=1,000万円あるため、預貯金で1,000万円所有したまま相続を迎えるよりも、生命保険に預けておくことで1,000万円全てが相続税非課税となるため断然有利になります。

            90歳まで加入OK

            「もう85歳だから、今さら加入できる生命保険なんてないよ」という話を聞きます。

            あきらめないでください。

            90歳まで無審査で加入できる生命保険がいくつかあります。

            1,000万円の保険料を支払って1,000万円が相続後に戻ってくる、というように運用益はありませんが、相続税の非課税枠が残っている場合は活用した方が有利です。

            加入を検討したいという方は、税理士法人日本税務総研までお気軽にお問い合わせください。


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            • 祭具の相続税評価

              祭具の相続税評価

              祭具は相続税の課税対象とならない財産として定められています。

              祭具の範囲は相続税法基本通達において次のように定められていてます。

              法第12条第1項第2号に規定する「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいうのであるが、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないものとする。

              相続税法基本通達第12条

              信仰の対象として使用されているものを継承する際は相続税の課税対象にはなりません。

              商品としての祭具は継承の際に相続税が課税される対象となります。

              例えば、貴金属でできた仏像などは投資目的の祭具とみなされ、相続税の課税対象となる可能性があります。


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              • 借地権の相続登記

                借地権の相続登記

                借地権(建物を所有するために、他人の土地に設定された賃借権や地上権)は相続登記をすることが可能です。
                借地上の建物および借地権を相続するのに地主の承諾は不要で、賃貸借契約書の再作成や名義書換料の支払義務はありません。
                地主に「土地の賃借権を相続により取得しました。」と通知するだけでかまいません。
                誰が借地人となり賃料を支払うのか、地主に内容証明を送付しておきましょう。

                借地上の建物を第三者に譲渡する場合は地主の承諾が必要です。

                定期借地権の場合

                定期借地権とは存続期間を50年以上とする借地権で、契約の更新や延長がなく、建物買取請求なども認められていません。

                相続した借地権が定期借地権の場合、存続期間満了時に借地権は消滅し、建物を解体して土地を地主に返さなければなりませんから、契約期間を確認しておきましょう。


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                • 相続手続きの期限について

                  相続手続きの期限について

                  相続手続きの期限について

                  被相続人が亡くなって葬儀を終え、一段落した頃から相続の手続きを始めなければなりません。

                  相続の手続きには期限が定められているものあり、申告が遅れると不利益を被ることがあります。

                  3カ月以内の相続放棄・限定承認

                  相続が開始すると遺言書の有無、遺言書があればその内容を確認し、相続人と相続財産を確認します。

                  プラスの財産よりも借金が多い場合や、借金がありそうと予測される場合には、相続放棄と限定承認の手続きを検討しなければなりません。

                  相続開始から3ヶ月以内に相続するかどうかを相続人それぞれが確定し、相続放棄や限定承認をする場合は家庭裁判所に申請します。

                  4ヶ月以内の所得税の準確定申告手続き

                  被相続人の「所得税」を申告する準確定申告を相続開始から4ヶ月以内にします。

                  例えば、3月15日に亡くなった場合、その年の1月1日~3月15日の期間の所得を申告します。
                  年金収入だけであれば源泉徴収により所得税が天引きされているため準確定申告の義務はありませんが、源泉徴収される金額は一年分の年金額に対して算出されているため、殆どの場合、申告をすれば所得税が還付されることになります。

                  相続税申告は10ヵ月以内

                  遺産分割協議で財産の分配比率が決定し、相続財産が多い場合には相続税が算出されます。

                  相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告、納税をします。

                  遺産分割は無期限

                  遺産分割協議は期限が決まっていません。

                  どの遺産をどの相続人に相続させるかという協議を、相続人間で納得するまで行うことで、その後の作業が円滑に進みます。
                  相続人の中に未成年者がいる時は、成人するまで遺産分割協議を待つ、あるいは特別代理人を立て遺産分割を行うことも可能です。

                  遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成します。

                  遺産分割協議書とは、遺言書がない場合に相続人全員が参加して遺産分割協議を行った後、決定した遺産分割案を書き留めたもので、相続人全員の署名と実印の捺印で成立します。印鑑は実印を使わないと不動産登記や銀行手続ができません。

                  遺産分割協議書は相続人全員の同意の下で遺産分割を行ったことを証明する大切な書類です。
                  預金の相続手続に際して金融機関から提出を求められたり、法務局へ相続登記申請を行う際にも必要となるなど、相続の各種手続で提出を求められます。


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                  • 相続関係書類に署名できない相続人がいる場合

                    相続関係書類に署名できない相続人がいる場合

                    相続関係書類の多くは本人による署名捺印が必要です。

                    仕事が忙しく時間が取れないなどで相続関係書類に署名できない相続人がいる場合、親族や相続人同士の協力が必要です。

                    障害により意思表示ができないなどの理由で署名ができない相続人がいる場合、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てをして、成年後見人を選任してもらいます。

                    遺産分割協議書は、共同相続人全員の署名・押印が必要です。
                    具体的には、遺産分割協議書の署名欄に、各相続人の印鑑証明書に記載がある住所及び氏名を署名して、実印の押印が必要です。

                    各相続人の合意であることを証明する書面として、遺産分割協議書には印鑑証明書を添付します。


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                    • 年金の相続手続き

                      年金の相続手続き

                      厚生年金や国民年金などを受給していた人が亡くなった時に受け取る遺族年金は、所得税も相続税も課税されません。

                      厚生年金加入者の場合

                      在職していた会社を管轄している社会保険事務所に遺族給付裁定請求書を提出すれば、遺族基礎年金か遺族厚生年金が支給されます。
                      報酬比例部分額の四分の三に相当する額が、受給者の指定する銀行や郵便局へ年六回に分けて振り込まれます。

                      国民年金加入者の場合

                      遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金のどれかが支給されます。ただし、族が国民年金に入っていなければ受け取ることができません。
                      死亡から五年以内に、各市町村役場の国民年金課にある遺族給付裁定請求書に記入して請求すると、受給者の指定する銀行や郵便局に年六回に分けて振り込まれます。


                      会社から遺族の方に退職金として支払われる年金は、退職手当金等に含まれて相続税の対象となります。個人の年金保険契約で、遺族の方が残りの期間について年金を受け取る場合にも、相続税の対象となります。

                      また、受け取った年分について所得税が課されますから注意して下さい。


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