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  • 接面街路の途中で路線価が異なっている場合

    接面街路の途中で路線価が異なっている場合

    接面道路の途中で路線価が異なっている場合

    宅地がどの程度公道に接する部分を持っているかは、宅地の利用効率に大きく影響し、その土地の市場価格にも影響します。接面街路の途中で路線価が異なっている場合には、その接面距離の影響力を加味して、正面路線価を判定する必要があります。

    【表13】

    接面道路の途中で路線価が異なっている場合
    接面道路の途中で路線価が異なっている場合

    (計算例)

    • A路線
      (85,000円×24m+75,000円×16m)÷40m(A路線との接面距離)=81,000円
      81,000円×0.95(奥行距離30mに対応する奥行価格補正率)=76,950円
    • B路線
      83,000円×0.95(奥行距離30mに対応する奥行価格補正率)=78,850円

    この場合、この土地全体の評価額に比較的大きい影響力を与えているのはB路線ということになりますから、正面路線価は83,000円となります。

  • 土地の間口距離

    土地の間口距離

    路線価方式では、宅地評価にあたっては常に接面する路線の標準的宅地との比較において、価格格差がどの程度有るかを自分なりに考えながら画地調整を行うことが大切です。宅地がどの程度公道に接する部分を持っているかは、宅地の利用効率や建物の建築制限に大きく影響し、さらに、その土地の市場価格にも影響します。間口距離は宅地の価格に影響する大きな要因です。

    【図20】

    図20

    標準的宅地(網掛部分)は間口と奥行きのバランスがとれ、有効利用という点では最適規模です。それに対して、面積は同じでも、間口がb、あるいは奥行がcである土地は、標準

    的宅地と比較して、間口と奥行きのバランスが良くないため、利用効率が悪いといえます。

    評基通では、標準宅地に対する補正率を地区区分ごとに次のように定めています。

    【表6】間口狭小補正率表

    間口距離
    (メートル)

    地区区分

    ビル街地区

    高度商業地区

    繁華街地区

    普通商業
    併用住宅地区

    普通住宅地区

    中小工場地区

    大工場地区

    4未満

    0.85

    0.90

    0.90

    0.90

    0.80

    0.80

    4以上6未満

    0.94

    1.00

    0.97

    0.94

    0.85

    0.85

    6以上8未満

    0.97

    1.00

    0.97

    0.90

    0.90

    8以上10未満

    0.95

    1.00

    1.00

    0.95

    0.95

    10以上16未満

    0.97

    1.00

    0.97

    16以上22未満

    0.98

    0.98

    22以上28未満

    0.99

    0.99

    28以上

    1.00

    1.00

    【表7】奥行長大補正率表

    奥行距離/間口距離

    地区区分

    ビル街地区

    高度商業地区
    繁華街地区
    普通商業・併用住宅地区

    普通住宅地区

    中小工場地区

    大工場地区

    2以上3未満

    1.00

    1.00

    0.98

    1.00

    1.00

    3以上4未満

    0.99

    0.96

    0.99

    4以上5未満

    0.98

    0.94

    0.98

    5以上6未満

    0.96

    0.92

    0.96

    6以上7未満

    0.94

    0.90

    0.94

    7以上8未満

    0.92

    0.92

    8以上

    0.90

    0.90

    なお、間口距離は想定整形地によって以下のような方法で測ります。

    1)接面距離は想定整形地(点線)を入れることで、aの距離が間口距離となることがわかります。

    【図21】

    図21

    2)路線に面した想定整形地(点線)を入れると、接面距離はaですが、bの幅員でも差し支えありません。

    【図22】

    図22

    3)想定整形地が公道に面している場合と比較して接面距離を考えると間口距離はaとなります。

    【図23】

    図23

    4)屈折路に面する土地の場合は、接面距離が長い路線(c)に面した想定整形地を入れ、接面距離b+cが想定整形地aの距離を超えた場合は、aに止めます。

    【図24】

    図24

    5)最も想定整形地の面積が小さくなるように取り、aが間口距離となります。

    【図25】

    図25
  • 袋地について

    袋地について

    袋地について

    袋地も不整形地の一種ですが、前面の他人所有地が大きく土地の価値を下げている点が特徴です。不整形地と同じような評価方法を用います。

    【図29】のようなケースで説明すると次のようになります。

    【図29】

    袋地の計算例
    袋地の計算例

    まず「不整形地の場合の奥行価格補正率」の「(4)差引計算により評価する方法」により、奥行価格調整をします。

    次に、奥行価格調整後の価額に不整形地補正率を乗じます。

    (計算例)

    ①奥行価格調整後の価額

    1. 300,000円×0.97(奥行距離25mに対応する奥行価格補正率)×375㎡(甲・乙土地の合計地積)-300,000円×1.0(奥行距離11mに対応する奥行価格補正率)×143㎡(乙土地の地積)=66,225,000円
    2. 66,225,000円÷232㎡=285,452円

    ②不整形補正率の計算

    1. 0.9(間口2mに対する間口狭小補正率)×0.9(奥行長大補正率)=0.81
    2. かげ地割合=(25m×15m-232㎡)÷(25m×15m)≒0.381
      0.88(不整形補正率表の補正率)×0.9(間口狭小補正率)=0.79(小数点2位未満切捨)
    3. (1)と(2)の低い率、0.79を採用します(0.6を下限とします。)。

    ③評価額

    285,452円×0.79(不整形補正率)×232㎡=52,317,642円

  • 無道路地について

    無道路地について

    無道路地について

    無道路地は道路をつけて初めてその市場価値が生じますので、少なくとも袋地にしないと評価ができないわけです。それには道路敷設費がかかりますが、その相当額を通路部分の評価額として控除するのが評価上の特徴です。ですから、袋地の場合と異なり、通路部分の評価に際して、画地補正はしないことになります。具体的な無道路地の評価は次のとおりです。

    整形地の場合

    【図30】

    整形地の場合
    整形地の場合

    財産評価基本通達では、「無道路地とは、道路に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む)をいう。」と定められています。道路への開口部がないのでは、宅地の場合はほとんど利用することはできません。開口部である間口があることで市場性を持つことができます。

    間口は一般的に建築基準法第43条の接道制限があり、少なくとも2m幅の通路が必要ですので、2mとして計算します。

    (注)必要となる通路の幅員は土地の所在する市区町村や通路の長さによって異なる場合があります。

    無道路地の奥行価格補正後の価額

    ①無道路地と前面宅地を合わせた土地の価額
    100,000円(路線価)×0.91(奥行距離40mに対応する奥行価格補正率)×800㎡(無道路地と前面宅地の合計地積)=72,800,000円

    ②前面宅地の価額
    100,000円(路線価)×1.00(奥行距離20mに対応する奥行価格補正率)×400㎡(前面宅地の地積)=40,000,000円

    ③無道路地の奥行価格補正後の価額
    (72,800,000円(無道路地と前面宅地を合わせた土地の価額)-40,000,000円(前面宅地の価額))÷400㎡(無道路地の地積)=82,000円

    不整形地補正

    ①0.9(奥行長大補正率)×0.9(間口狭小補正率)=0.81

    ②かげ地割合=(800㎡-400㎡)÷800㎡≒0.50
     0.79(不整形地補正率表の補正率)×0.9(間口狭小補正率)=0.71(小数点2位未満切捨)

    ①と②の低い率、0.71を採用します(0.6を下限とします。)。
     82,000円×0.71(不整形地補正率)×400㎡=23,288,000円

    無道路地としてのしんしゃく(通路部分の価額)

    100,000円×40㎡(通路部分の地積2m×20m)=4,000,000円
    <23,288,000円(無道路地の不整形地補正後の価額)×40%(限度割合※)

    ※この限度割合とは、評基通20-2(無道路地の評価)「《不整形地の評価》の定めによって計算した価額からその価額の100分の40の範囲において相当と認められる金額」のことです。

    評価額

    23,288,000円-4,000,000円=19,288,000円

    無道路地が不整形地の場合

    【図31】

    不整形地の場合
    不整形地の場合

    この場合、奥行価格補正は、「不整形地の場合の奥行価格補正率」の「(3)近似整形地を基として評価する方法」と「(4)差引計算により評価する方法」が合理的と考えられますので、これを使って計算します。

    不整形地の奥行価格補正後の価額

    ①近似整形地(abcd)と隣接する整形地(befc)を合わせた土地(aefd)の価額
     100,000円(路線価)×0.95(奥行距離30mに対応する奥行価格補正率)×600㎡(近似整形地(abcd)と隣接する整形地(befc)を合わせた土地(aefd)の合計地積)=57,000,000円

    ②隣接する整形地(befc)の価額
     100,000円(路線価)×1.00(奥行距離10mに対応する奥行価格補正率)×200㎡(隣接する整形地(befc)の地積)=20,000,000円

    ③不整形地の奥行価格補正後の価額
     (57,000,000円(近似整形地(abcd)と隣接する整形地(befc)を合わせた土地の価額)-20,000,000円(隣接する整形地(befc)の価額))÷400㎡(不整形地の面積)=92,500円
     92,500円×400㎡=37,000,000円

    不整形地補正

    ①0.9(奥行長大補正率)×0.9(間口狭小補正率)=0.81

    ②かげ地割合=(700㎡-400㎡)÷700㎡≒0.428
     0.85(不整形地補正率表の補正率)×0.9(間口狭小補正率)=0.76(小数点2位未満切捨)

    ①と②の低い率、0.76を採用します(0.6を下限とします。)。
     92,500円×0.76(不整形地補正率)×400㎡=28,120,000円

    無道路地としてのしんしゃく(通路部分の価額)

    100,000×20㎡(通路部分の地積)=2,000,000円<28,120,000円(無道路地の不整形地補正後の価額)×40%(限度割合)

    評価額

    28,120,000円-2,000,000円=26,120,000円

  • がけ地とは

    がけ地とは

    がけ地とは

    この場合のがけ地とは、宅地の一部にのり面があり宅地と一体となってその効用に貢献している斜面のことで、山の斜面という意味ではありませんので、早合点しないように注意が必要です。あくまで「がけ地等を有する宅地」という表現になっているのです。「法面(のり面)」と考えた方がわかりやすいでしょう。

    具体的ながけ地の評価は次のようになります。

    東を向いているがけ地部分を有する宅地の評価

    【図32】

    東を向いているがけ地部分を有する宅地
    東を向いているがけ地部分を有する宅地

    がけ地補正率の計算

    120㎡÷370㎡≒0.324(小数点第3位未満四捨五入)
    がけ地割合0.324の場合のがけ地補正率=0.87

    【表10】がけ地補正率表

    がけ地面積/総面積

    がけ地の方位

    西

    0.10以上

    0.96

    0.95

    0.94

    0.93

    0.20以上

    0.92

    0.91

    0.90

    0.88

    0.30以上

    0.88

    0.87

    0.86

    0.83

    0.40以上

    0.85

    0.84

    0.82

    0.78

    0.50以上

    0.82

    0.81

    0.78

    0.73

    0.60以上

    0.79

    0.77

    0.74

    0.86

    0.70以上

    0.76

    0.74

    0.70

    0.63

    0.80以上

    0.73

    0.70

    0.66

    0.58

    0.90以上

    0.70

    0.65

    0.60

    0.53

    南東を向いているがけ地部分を有する宅地の評価

    【図33】

    南東を向いているがけ地部分を有する宅地
    南東を向いているがけ地部分を有する宅地

    「がけ地補正率表」に定められた方位の中間を向いているがけ地は、それぞれの方位のがけ地補正率を平均して求めます。

    [0.88(がけ地割合0.324の場合の南方位のがけ地補正率)+0.87(がけ地割合0.324の場合の東方位のがけ地補正率)]÷2=0.875

    二方向にがけ地部分を有する宅地の評価

    【図34】

    二方向にがけ地部分を有する宅地
    二方向にがけ地部分を有する宅地

    二方向にがけ地部分を有する宅地のがけ地補正率は、評価対象地の総地積に対するがけ地部分の全地積の割合に応ずる各方位別のがけ地補正率を求め、それぞれのがけ地補正率を方位別のがけ地の地積で加重平均して求めます。

    がけ地割合

    {100㎡(東方位のがけ地の地積)+100㎡(南方位のがけ地の地積)}÷450㎡(評価対象地の総地積)=0.444

    方位別のがけ地補正率

    がけ地割合0.444の場合の東方位のがけ地補正率…0.84
    がけ地割合0.444の場合の南方位のがけ地補正率…0.85

    加重平均によるがけ地補正率

    {0.84(東方位・がけ地割合0.444のがけ地補正率)×100㎡(東方位のがけ地の地積)+0.85(南方位・がけ地割合0.444のがけ地補正率)×100㎡(南方位のがけ地の地積)}÷200㎡(がけ地部分の全地積)=0.845

  • 容積率とは

    容積率とは

    容積率について

    容積率は、土地の用途並びに有形的利用及び権利の態様に大きく影響を与え、その市場価格に直結します。そのため、一画地の土地が容積率の異なる二つの地域にわたる【図35】のような場合には、評価額を調整する必要があります。

    【図35】

    容積率が異なる地域にわたる宅地
    容積率が異なる地域にわたる宅地

    容積率が異なる2以上の地域にわたる宅地の評価

    正面路線価はその全部が容積率600%である標準宅地を基準に評定されていますので、その路線価を基に計算した価額を減額調整する必要があります。

    容積率が異なることを考慮しない場合の計算

    700,000円×1.00(奥行距離45mに対応する奥行価格補正率)×900㎡=630,000,000円

    減価率の計算

    [1-(600%×600㎡+400%×300㎡)÷(600%×900㎡)]×0.8(容積率が価額に影響を及ぼす影響度)=0.089(小数点以下3位未満四捨五入)

    評価額

    630,000,000円-630,000,000円×0.089(減価率)=573,930,000円

    【表10】容積率が価額に及ぼす影響度

    地区区分

    影響度

    高度商業地区、繁華街地区

    0.8

    普通商業・併用住宅地区

    0.5

    普通住宅地区

    0.1

  • 遺産分割協議のやり直し

    遺産分割協議のやり直し

    遺産分割協議のやり直し

    遺産分割

    遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が残された遺産を相続人間で分けることです。

    被相続人が、遺産の分配に関して遺言書を残しておられない場合、相続開始(被相続人の死亡)と同時にその財産は相続人全員で共有している状態となります。
    しかし、いつまでも共有状態を続けるわけにはいかないので、各財産を誰が取得するか決めなければなりません。(ただし、財産の種類によっては、共有状態とならず、分割の対象となる遺産から除外されるものもあります。)

    このように相続財産を誰が取得するか決めて相続人間で分配することを遺産分割といいます。

    遺産分割を行う際には、相続人全員で分割協議を行う必要があります。

    遺産分割を行わずに、全ての遺産を相続人全員の共有財産として残しておくことも可能ですが、共有のままではその財産の管理や運用に支障を生じ、将来もめ事の原因となりかねません。

    それを未然に防ぐためにも、相続が発生した際には早期に遺産分割の協議をして個々の遺産を各相続人に配分しておくことが必要です。

    不動産については、自宅は配偶者が、あるいは事業継承のために後を継ぐべき相続人(長男など)が相続するというケースが多いようです。また、金融資産を含めてほとんどの財産を配偶者に相続させるというケースもあります。配偶者の税額軽減を使えば、一定の枠(1億6千万円または全財産の半分)までなら配偶者の納めるべき相続税額は0になり、一見すると有利です。

    ただ、長い目でみると、早い段階で財産を次の世代に移しておいた方が得な場合もあります。例えば、お父様が亡くなってお母様が遺産の多くを相続されたような場合、お母様ご自身が既にお持ちの財産と相続で取得された財産とを合わせると、次の相続のときに納める税額が極めて多額になってしまうということもあり得ます。

    配偶者居住権

    2018年の相続法改正によって、配偶者居住権という制度が新設されました。遺産分割協議の中で、配偶者居住権の取得を希望し共同相続人全員の合意を得れば、自宅の敷地・建物を相続しなくても、配偶者は終生居住建物の使用収益ができるという権利です。(分割協議によるほか、遺産分割の審判や遺贈・死因贈与によっても取得することができます。)この制度は、2020年4月1日から施行されています。

    遺産分割協議のやり直し

    遺産分割協議とは、相続発生後、相続人全員の協議によって相続財産の分配を決めることをいいます。

    一部の相続人を排除して他の相続人だけで分割協議を行った場合、その分割は無効です。

    後から他の相続人が出現したりして、先の分割協議が相続人全員によるものでなかったようなときには、有効な遺産分割協議としては成立していませんので、新しく判明した相続人も加え改めて相続人全員による分割協議が必要です。

    一旦有効な分割協議が成立した後に、遺産分割協議をやり直すことは可能です。
    その際も、相続人すべての合意が必要です。

    ただし、再分割の内容によっては、贈与税その他の税金を課されることもありますので注意が必要です。

    遺言書(自筆証書遺言の作成方式が改正されました)

    2018年の相続法改正によって、自筆証書遺言が作成し易くなっています。

    遺言とは、死後の財産の処分等について、被相続人が生前に自分の意思を表示しておくもので、法的に効力をもつのは、財産の処分や認知・相続人廃除などの身分行為に関する事項です。

    自分の財産をどう処分するかは(相続人の遺留分を侵害するものでない限り)自由に決められるのが原則ですので、被相続人が、遺言でどの財産を誰に取得させるかも含めて死後の財産の分配を予め決めている場合には、遺産分割協議を経る必要はありません。ただし、分配する財産の割合だけしか決められていなければ、相続人の協議によって具体的な財産を誰がどのように取得するかを決める必要があります。

    遺言には、事故等の緊急時にのみ認められる特別方式の遺言と通常時いつでも作成できる普通方式の遺言とがあります。

    普通方式の遺言

    普通方式の遺言には、次の3つのものがあります。

    自筆証書遺言(民法968条)

    文字通り、遺言者が自筆で作成する遺言です。従前は、遺言の全文、日付、氏名を遺言者が自筆で書いて押捺することが要件とされ、代筆やパソコン等による印字は認められていませんでした。2018年の相続法改正によって、不動産や預貯金等の財産目録については、代筆やワープロ作成が可能となり、不動産登記事項証明書や預貯金通帳の写しなどを添付して財産目録とすることもできるようになりました。それらのすべてのページに署名・押印が求められる点はやや面倒ですが、この自筆証書遺言の方式緩和は、特に高齢者にとっての負担軽減を意図したもので、2019年1月13日から既に施行されています。

    更に、今回の相続法改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定されました。

    従前、自筆証書遺言については、遺産分割前に家庭裁判所での検認手続が必要でしたが、この保管制度を利用すれば法務局で本人確認の上、形式審査も行うので、相続開始後の検認の手続は不要となり、遺言書に基づいてすぐに遺産分割手続に入ることができます。

    法務局で、日付の誤りや署名・押印漏れなど方式の不備がないかチェックされ、紛失や破棄、偽造等のおそれもなくなりますので、後日の無用な紛争を避けることができます(もっとも、遺言書の内容そのものや有効・無効の争いまで防ぐことはできません)。

    ただ、この制度を利用するためには、遺言者本人が法務局に遺言書(無封・原本)を持参して保管申請をする必要があり、代理申請は認められません。ですから判断力などはしっかりして文字も書けるけれど、外出等が困難な場合に使えないのは難点です。
    この保管制度は、2020年7月10日から全国の法務局で始まり、申請できる遺言書保管所は、遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所となります。

    公正証書遺言(民法969条)

    公証人が法律の定める方式で作成する遺言書です。
    遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することや遺言能力(遺言の内容とその法律効果を弁識・判断し得る能力)などの要件に加えて、証人2人以上の立会いが必要です。
    そのメリットは、相続開始後の検認手続が不要であること、原本が公証役場で保管される紛失の危険がないこと、平成元年以降に作成されたものについては、全国の公証役場で検索が可能で遺言書の存在が明らかになることなどです。(自筆証書遺言についても上述した保管制度を利用すれば、これらの点でのデメリットはほぼ解消されることになります。)
    公正証書遺言の要件のうち、次の二点は、特に留意する必要があります。

    1. 口授の有無(遺言内容について口授があったといえるかどうか)
    2. 遺言能力(死後の財産処分等をするだけの意思能力を備えているかどうか)

    これらの要件に欠けるとして裁判で無効とされた例も散見されます。(公証人が作成したからといって有効になるわけではありません。)

    秘密証書遺言(民法970条)

    遺言の内容を誰にも知られたくない場合に用いる方式です。
    遺言者が作成した遺言書に署名・捺印した上で封筒に入れて封印(遺言書に押したものと同じ印鑑)し、これを公証人及び証人2人以上の前で提出して、公証人の認証をもらいます。自筆証書の場合と異なり、遺言書の内容はパソコンやワープロでも構いませんが署名だけは自署する必要があります。また、公証役場で保管するわけではないので、紛失等のおそれはありますし、公証人は封印後の認証をするだけで遺言書自体の形式チェックはできませんから、相続開始後の検認手続も必要です。


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    • 遺産分割調停申立て手続きに必要な書類

      遺産分割調停申立て手続きに必要な書類

      遺産分割調停申立て手続きに必要な書類

      被相続人が亡くなりその遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停、又は審判の手続を利用することができます。調停手続を利用する場合は遺産分割調停事件として申し立てます。この調停は相続人のうちの一人、もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。

      調停手続では、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産について鑑定を行うなどして、事情をよく把握したうえで各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し、解決案を提示したり解決のために必要な助言をし、合意を目指し話合いが進められます。

      話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が遺産に属する物、又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して審判をすることになります。

      申立てに必要な書類

      誰が相続人かによって必要書類も変わってきます。遺産分割は相続人全員でしなければならないので、相続人に漏れがないか確認する必要があるからです。

      第一順位相続人(子及びその代襲者)がいる場合

      相続人が、被相続人の配偶者と子及びその代襲者(孫)又は子及び代襲者のみ

      1. 相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
      2. 相続人全員の戸籍謄本
      3. 被相続人の子(その代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
      4. 相続人全員の住民票又は戸籍附票
      5. 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)

      第二順位相続人(直系尊属)がいる場合

      相続人が、被相続人の配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)又は直系尊属のみ

      1. 被相続人の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る)に死亡している方がいらっしゃる場合(例:相続人が父方祖母のみの場合、父母と父方祖父及び母方祖父母)、その方々の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

      被相続人の配偶者のみの場合又は第三順位相続人(被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者)がいる場合

      配偶者のみ、配偶者と兄弟姉妹及びその代襲者(甥・姪)又は兄弟姉妹(その代襲者)のみ

      1. 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
      2. 上記1のほか被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
      3. 被相続人の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
      4. 代襲者としてのおい・めいで死亡している方がいらっしゃる場合、その方の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

      付加できる書類

      言い分を裏付ける証拠書類や領収書(契約書等)がある場合は、そのコピー等を提出することが求められます。
      早期の解決を行うにはこのような証拠が必要になります。

      調停の申立てにおいては、これらのほかに、財産や債務に関するデータが確認できるもの、その他の財産の状況、生活の状況に関する資料等を提出することになります。

      各簡易裁判所で細かい運用を定めている場合があり、詳細に関して質問できます。
      申立先の簡易裁判所を管轄する地方裁判所のウェブサイトを確認してください。

      裁判所によって求められる書類が違う

      裁判所によって求められる書類が違うので十分に確認する必要があります。

      簡易裁判所で調停申立書の用紙とその記載方法の見本をよく確認して記載ミスがないように慎重に明記していきましょう。

      調停の申立てをする方を「申立人」として、住所と氏名、郵便番号、電話番号などを明記して、相手の住所や氏名をしっかり明記しておきましょう。

      提出すべき申立書の数は相手方の数に1を加えた数になります。例えば相手方が1人の場合は2部提出になりますので、忘れずに一部を多く作成する必要があります。

      不動産の登記簿謄本又は登記事項証明書は法務局で入手することができます。

      相続にトラブルが発生する可能性はよくあります。
      他の相続人との不一致が原因で相続の手続きが進まないこともあります。
      慎重に遺産分割協議を行い、後にトラブルがないように進めていくことが大切です。
      複雑なトラブルや解決できない問題の時には、専門家に相談する必要があります。


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      • 相続した不動産を売却する際の留意点

        相続した不動産を売却する際の留意点

        相続した不動産を売却する際の留意点

        相続した不動産を売却すると譲渡所得の申告が必要に

        相続した土地を売却する場合、基本的に「売却益」があれば譲渡所得税が課税されます。譲渡する年の1月1日現在で、所有期間が5年を超えていれば譲渡益(値上益)の20%(復興特別所得税をいれると20.315%)、5年以内ですと39%(同39.63%)です。

        • 被相続人が3,000万円で購入した土地を、相続後に5,000万円で売却した場合、利益の2,000万円に対して20%の税金が課税されます。(長期譲渡所得の場合:相続で取得した場合には、被相続人が取得したときから通算して所有期間を計算します。)
          *譲渡所得の計算上控除する土地の取得価額は被相続人などがその土地を購入した価額です。相続税の評価額ではありません。
        • 先祖代々の土地など相当昔から所有していた土地の取得時の購入価額は分からないことが多く、分かっても何円とか何十銭などということもあり、取得価額が不明ないし売却金額の5%よりも低い時は、売値の5%を取得費として計算できることとされています。
        • 取得額を証する書類はないが、あきらかに5%を超える時は、税理士にご相談ください。

        相続した不動産の売却についての特例について

        1. 相続税の取得費加算
          相続税申告期限から3年以内に相続または遺贈で取得した土地を譲渡する場合、一定の方法により計算した相続税に相当する金額を土地売却の譲渡所得から控除することが出来ます。これを相続税の取得費加算の特例といいます。
        2. 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却した場合には、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(相続等した相続人の数が三人以上の場合は2,000万円)まで控除することができます。(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)当該特例を受けるためには、上記(1)の特例を受けていないことや、相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売却することなど、一定の要件を充たす必要があります。

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        • 贈与の対象になる新株引受権

          贈与の対象になる新株引受権

          贈与の対象になる新株引受権

          新株引受権とは

          新株引受権とは、株式会社が新株を発行する際、それを優先的に引き受ける権利のことを言います。一般的に会社が増資などで新株を発行する際には株主の持ち株割合に応じて平等に新株を分配しなければいけません。

          新株引受権の課税問題

          同族会社の新株の割当てを受けた者がその新株を引き受けずに、代わってその株主の親族等が引受権を行使した場合には、その新株引受権は贈与によって取得されたものとみなされ、贈与税が課税されることになります。

          また、増資前の株式の割合に応じて新株の引受がなされなかった場合についても、その割合を超える新株引受権の割当て部分について贈与によって取得したものとみなされます。

          なお、会社法においては自己株式の処分による株式の割当てについても新株発行と区別せずに扱うこととされているため、贈与税の取扱い上、新株の発行及び自己株式の処分に係る引受権を総称して「募集株式引受権」と定義しています。

          同族会社が新株の発行(当該同族会社の有する自己株式の処分を含む。)をする場合において、当該新株に係る引受権(以下「募集株式引受権」という。)の全部又は一部が会社法に掲げる者(当該同族会社の株主の親族等(親族その他法施行令第31条に定める特別の関係がある者をいう。以下同じ。)に限る。)に与えられ、当該募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、当該株主の親族等が、当該募集株式引受権を当該株主から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。

          相続税法基本通達9-4

          贈与により取得したものとする募集株式引受権数の計算

          誰からどれだけの数の募集株式引受権の贈与があったものとするかは、次の算式により計算されます。この場合においてその者の親族等が2人以上あるときは、当該親族等の1人ごとに計算します。

          A×C/B=その者の親族等から贈与により取得したものとする募集株式引受権数

          A:他の株主又は従業員と同じ条件により与えられる募集株式引受権の数を超えて与えられた者のその超える部分の募集株式引受権の数

          B:当該法人の株主又は従業員が他の株主又は従業員と同じ条件により与えられる募集株式引受権のうち、その者の取得した新株の数が、当該与えられる募集株式引受権の数に満たない数の総数

          C:Bの募集株式引受権の総数のうち、Aに掲げる者の親族等(親族等が2人以上あるときは、当該親族等の1人ごと)の占めているものの数


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