信託制度の概要
信託とは、委託者が受託者に財産を移転し、受託者が信託の目的に従って、受益者のためにその信託財産の管理・処分をすることである。
遺言執行者として指定されていた信託銀行が、相続人の同意のうえ遺言執行者に就任し、不動産の処分、信託の設定等を行った。相続税及び譲渡所得の課税関係はどうなるか。
個人が、土地、建物などの資産を公益法人等に寄附した場合、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、その資産の取得時から寄附時までの値上がり益に対しての所得税について非課税とする制度が設けられている。
相続や贈与の場合に、被相続人や贈与者に譲渡所得を課税し、相続人や受贈者に相続税や贈与税を課税するのは国民感情から乖離する課税形態であるとの理由で昭和27年、昭和37年、昭和48年の改正を経て、現行法は、相続や贈与があった場合、譲渡所得の課税対象とすることなく取得価額の引き継ぎによる課税の繰り延べが行われている。
株式会社など営利法人が遺贈を受けた場合、受贈益に対し法人税が課税される。営利法人が相続税の納税義務者となることはない。営利法人に対する利益の供与により、その法人の株価が上昇するときには、遺贈者から営利法人の株主に対し株価上昇分の経済的利益の遺贈があったと認定され相続税の課税が行われる。
遺言による換価分割(清算型遺贈)は、遺産を換価し、その対価として得られる金銭を共同相続人間(包括受遺者を含む。)に分配することを指示した遺産分割方法の指定である。遺言執行者がある場合は、遺言執行者が相続財産の一部又は全部を換価して相続人や受遺者に分配することとなる。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言の対象となった相続財産について、処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないので遺言が分割方法を指定していれば、遺言の指示の通り遺産は分割される。遺留分を侵害する遺言も当然に無効となるものではない。
停止条件付遺贈においては、条件成就まで遺贈の効力が発生しないので遺贈の目的物は未分割財産として取扱い、民法900条から903条までの規定による相続分に従って課税価格を計算する。条件が成就する前に分割してしまった場合には、その分割した割合によって取得したものとして申告しても差し支えないこととされている。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。相続が開始すると遺産は相続人と包括受遺者の遺産共有状態となる。包括受遺者は、債務も承継し、遺産分割協議にも参加することとなる。包括遺贈の承認・放棄は、特定遺贈と異なり、相続放棄、承認及び限定承認と同じ手続きを行う。